精子提供者に会えた弟と会えない私
ようやく最近、精子提供について父と話せるようになったが、彼には出生に関する秘密を娘に打ち明けるつもりのなかったことがはっきりした。キムにとって、これほど重要な事実をきちんと説明する意思が父親にはなかったことで、彼女が抱える傷はさらに深まった。
その後、母親とは折にふれて精子提供について話題にしてきたが、そのたびに、彼女がある種の罪悪感を抱いていることをキムは感じ取ってきた。それは決して、提供精子によって子供をもうけたことに対してではなかった。キムは言う。
「私を産んだとき、母はすでに30歳になっていました。今と違い、当時としては出産適齢期を過ぎていて、彼女には他に選択肢がなかったのです。ウェンディという女性にとって、提供精子による妊娠こそが、子供を持つ最後のチャンスだったのです。母が抱いている罪悪感の根底には、同じように提供精子で生まれた弟はドナーに会えたのに、私は会うことができないという屈折した思いがあるのだと思います」
娘が感じ取る母の罪悪感
私は、キムからウェンディの連絡先を聞き、彼女自身の言葉で、娘が感じ取っている罪悪感の正体について答えてほしいとメールで訊ねてみた。
親子の心の機微にふれる問題だけに、返信がないことも十分に予想されたが、ウェンディからの返事は2日後に届いた。少し長くなるが、その内容を紹介する。