陸上での配備が困難になったために代替システムが生まれた

「イージス艦」は、このシステムを搭載した艦艇で、海上交通の安全確保に当たる護衛艦隊群の防空中枢艦として整備された。

「イージスアショア」とはイージス艦の陸上版にあたる。特徴は陸上に根を張った固定基地に配備したイージスシステムによる、弾道ミサイル防衛を中心とした広範囲の国土の防空である。広範囲とは本システム2基で北海道から南西諸島全体をカバーできると防衛省は説明している。

「イージスシステム搭載艦」とは、イージスアショアの我が国内配備が困難となった事態への代替のシステムである。陸上に「根を張った」イージスアショアとは異なり、イージスアショアと同じ性能のシステムを大型艦に搭載、つまり洋上を移動しながら我が国土の広範囲の防空に当たるものと考えられるが、細部の構想を防衛省は公表していない。今後もまだまだ細部が変化することも考えられる。

抜本的な仕様変更でコストが上がるも説明はなし

ここで、イージスシステム搭載艦レーダーの仕様変更について補足説明が必要となる。現在想定しているレーダーは、本来陸上システムとして防衛省が選定したものであり、そのまま運用環境が大きく異なる洋上で使用できないため大きな仕様変更が必要となった。現在はこの仕様変更に応じたレーダーは製造中とされている。この仕様変更はこれまで何回か論議された価格上昇と技術リスクの一因と考えられるが、これまた防衛省の説明はない。

ちなみに、艦上システムをそのまま陸上に転用する米海軍のイージスアショアは、運用環境が厳しい海上から、相対的に「穏やかな」陸上への転用であり、仕様変更の規模は、防衛省構想のイージスシステム搭載艦よりもはるかに小さいことは確実である。

イージス艦導入に向けた研究は1983年に始まった

さて、実をいうと、私はイージス艦一番艦の導入に担当者としてかかわっている。

海上幕僚監部でイージス艦の導入に向けた事前研究作業を始めたのは1983年ごろだったと記憶している。当時のソ連軍はマッハ3級の超音速ミサイル(注:これは今話題の極超音速対艦ミサイルとは異なる、高速であるが通常の対艦ミサイル)や超音速爆撃機バックファイア、最新鋭の電子妨害機の導入を進めており、当時海上自衛隊が配備を進めていた従来のミサイル護衛艦では対処が難しいと目されていた。

このため、新たなミサイル護衛艦として検討対象にしたのがアメリカで開発され、当時一番艦が就役したばかりのイージス艦だった。