アメリカ滞在中、モルガン時代の古い仲間と情報交換のために会うことになりました。私はボストンに滞在しており、彼はニューヨークに住んでいたので、その中間地点くらいのホテルで落ち合おうという話になりました。

アメリカ人の友人が2つのホテルを推薦してきましたが、その料金を見てびっくり。安いほうのホテルが1泊なんと20万円。しかも、休日となるとそれが一気に40万円に跳ね上がるのです。

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それでも超高級ホテルというわけではなく、せいぜい上の下というくらい。日本なら1泊5万円といったところでしょう。

そんなホテルの料金が1泊20万円から40万円だというのです。私がアポイントを平日にしてもらったのは言うまでもありません。

もちろん、昨今の円安の影響があるとはいえ、1年ほど前の1ドル105円のレートで計算したとしても、1泊約16万円。感覚的には日本よりも3倍から4倍くらい高いイメージです。

給料も増えているからアメリカ人には高くない

しかし、アメリカ人は決して、この値段を高いとは思っていないのです。

なぜなら、物価も上がっているけれど、彼らの給与も上がっているから。ホテル料金が3倍、4倍になっても、自分の給与もまた3倍、4倍になっていれば、体感価格は変わりません。事実、この日、ホテルは満室でした。

ちなみに現在のアメリカはかなりの人手不足ですが、そのアメリカ人の友人に会う前に言われました。

「タケシ、日本のホテルのように“おもてなし”は期待するなよ。従業員の大半が大学生のアルバイトだから」と。「えっー、1泊20万円も支払って、従業員はアルバイトなのか」と思ったものです。

かつては日本にもそんな時代がありました。私が大学を卒業して三井信託銀行に入社したのは1974年のことですが、この年、「期中改定」というものがあり、4月にもらった初任給はたしか3万円だったのに対し、6月からはなんと6万円になりました。いきなり月給が2倍になったのです。

当時、田中角栄の日本列島改造計画のもと、経済がぐんぐん成長している時代でした。当然物価も上がっていましたが、給与もこのように急激に上がっていたので、生活に困ることはなかったのです。当時の日本ほどではないにせよ、今のアメリカ人の感覚はこのようなものだと思います。

「失われた30年」を痛感した

ちなみに私の最初のボーナスは20万円。手渡しでの現金支給でした。ところが、その当日の飲み会の帰りになんとボーナスを袋ごと落としてしまったのです。駅で気が付いて慌てて戻りましたが、後の祭り。倍になった給与とともに、いまだに忘れられない思い出です。

初代の林家三平師匠だったと思いますが、「男は泣いちゃいけない。泣いていいのはサイフを落とした時だけだ」とおっしゃっていましたが、私はこの日泣きました。