遺言を勝手に開封すると罰せられる
サスペンスドラマで見かける、遺言者から預かっていた遺言書を弁護士が持ってきて、親族一同が集う中それを読みあげる……というような儀式は必要ありません。
自筆証書遺言の場合、遺言書の保管者または発見者は、家庭裁判所において「検認」という手続をする必要があります。封がしてある場合、検認の手続をしないで開封することはできません。これらに反した場合、5万円以下の過料が科されます。検認では相続人が呼び出され、筆跡などから「確かにこの人の遺言書だ」という確認をします。なお、公正証書遺言や、遺言書保管制度で保管された自筆証書遺言については、検認の必要はありません。
遺言能力のないときに書かれた遺言は無効
ここからは、遺言にまつわるよくある質問をご紹介しましょう。
【Q1】筆跡をまねして、遺言書を偽造したらどうなりますか?
【A1】作成名義を偽り、さらに判もついていれば、有印私文書偽造となります。
【Q2】認知症を長く患い施設に入所していた父が、施設に入っているときに、財産を慈善団体に寄付する内容の遺言書を遺していた。本当にそんな遺言書を作ったとは思えないので、なんとかしたいのですが……。
【A2】遺言作成時には、遺言者に遺言書を書けるだけの判断能力(遺言能力)が必要です。これが欠けるにもかかわらず作成された遺言書は無効です。
公正証書遺言の場合、公証人という公の立場の第三者が、遺言者の遺言能力の有無を確認したうえで作成します。さらに、2人の証人が立ち会います。そのため、遺言が無効と判断されることはまれです。
一方、自筆証書遺言の場合、作成時の遺言能力を担保するものはありません。たとえば、遺言作成時前後の遺言者の入居施設の日報に書かれている遺言者の様子を見ると、他人とコミュニケーションを取るのもままならないくらい認知症が進行している様子だ……といった場合には、遺言能力がなかった、つまり作成した遺言書は無効と判断される可能性があります。
【Q3】ミステリー作品でよくあるような「このクイズを最初に解いた者に財産をすべて譲る」という内容の遺言は実際に可能ですか?
【A3】遺言によって特定の相手に財産を譲ることを「遺贈」と言いますが、遺贈には条件をつけることが可能です。たとえば『HUNTER×HUNTER』(集英社)のジンなら、「孫Aがハンター試験に合格した場合には、グリードアイランドを遺贈する」という内容の遺言も有効です。ただし設問のように、受遺者(遺贈を受ける者)を特定していない条件付遺贈は、無効とされる可能性は否定できないでしょう。
【Q4】貴重なフィギュアがあるが、この価値をわかる人が相続人にいません。実は5000万円の価値があるすごいコレクションです。だからこの価値がわかる友人に渡したい。
【A4】遺言で、その友人にフィギュアを譲る旨を定めることができます(遺贈)。ただし、財産全体におけるフィギュアの金額しだいでは、後述の遺留分の問題が生じます。