感染不安度はだんだんと低下する傾向

さて、こうした感染拡大の数次の波に対応して国民の意識はどう変化してきたであろうか。意識の変化をもっとも基本的な感染不安度でたどってみることにする。

実は、この間、継続的、定期的に国民の感染不安度を調べている調査はほとんどない。

報道機関は内閣支持率を毎月行っているのであるから、それに合わせて感染不安度を継続的に調査していてもよさそうなものなのだが、残念ながらそうしたデータは存在しない。NHKの「政治意識月例調査」が内閣支持率とともに2020年の2月から2021年の9月までは毎月、同じ聞き方で感染不安度を調べていたが、残念ながらその後は設問から消えてしまった。

そこで、今回は、インテージという民間の調査会社が最近まで継続的に、毎週あるいは隔週ごとに行っているインターネット調査の「コロナ禍における生活者マインド・トレンドデータ」における感染不安度の結果を使用した。

図表2には、インテージ調査における感染不安度の推移と図表1と同じソースの新規感染者数を同時に示した。

これで見ると、まず、感染不安度と感染者数の波のタイミングがかなり一致していることが分かる。各波で両者のピークは時期的にほぼ一致している。

新規感染者数については波ごとの数的規模の違いが大きいので対数目盛で表示した。対数目盛で見ると感染者数の拡大・縮小の波動が図表1と比較してずっと明瞭になる点が印象的である。

次に、感染者数は幾何級数的に拡大傾向にあるのに対して、感染不安度はそれとは対照的に低下傾向にあることが明らかである。

ピーク時の感染不安度の値をグラフに記したが、第2波と第3波の値が同じなのを除くと、各波のピークは第1波の83.6%から第8波の57.8%へと下がり続けているのである。

こうした動きは、当初、得体の知れない新型のウイルス感染症であるため、影響が推し量りにくく、感染者数自体は数的にそれほどでなかったにもかかわらず、今後の帰趨が見通せず、したがって感染不安度も非常に大きかったのであるが、感染の拡大・縮小を繰り返すうちに、どの程度の悪影響が生じるのかの見通しが得られるようになって感染不安度はだんだんと落ち着いてきたためと考えられよう。

それとともに、図表1でも推測されたように感染死亡率が、ウイルスの弱毒化、医療対応の改善、ワクチン接種の普及、集団免疫などの総合効果により、だんだんと低下してきたことが不安度の低下をさらに促進したと言えよう。