「ジェンダー平等」へのお考え

この点については、秋篠宮殿下の「ジェンダー平等(人が性別に関わらず平等な機会と権利を持ち得ること)」についてのお考えも、関係しているかもしれない。

先頃、刊行された江森敬治氏の『秋篠宮』第4章には、秋篠宮殿下がジェンダー平等について前向きなお考えを持っておられることが明らかにされていた。

平成18年(2006年)のお誕生日に際しての記者会見でも、秋篠宮殿下は次のように述べておられる。

「(女性皇族も)私たち(男性皇族)と同じで社会の要請を受けてそれが良いものであれば、その務めを果たしていく。……これにつきましては、私は女性皇族、男性皇族という違いは全くないと思います」

あるいは、秋篠宮家のご次女の佳子内親王殿下がこれまでガールスカウトの催しのごあいさつで繰り返し「ジェンダー平等の達成」を唱えておられることにも、秋篠宮殿下のお考えの影響を認めることができるかもしれない。

たとえば今年の10月16日、ガールスカウト日本連盟が開催した「ガールズメッセ2022」にご臨席になられた時のごあいさつの中でも、次のように述べられた。

「ジェンダー平等が達成され、誰もがより幅広い人生の選択肢を持てるようになることを、自らの可能性を最大限に生かす道を選べるようになることを、そしてそれが当たり前の社会になることを切に願います」

秋篠宮殿下は今回の記者会見でも、佳子殿下が公的なご活動としてごあいさつなどをされる時に、あらかじめアドバイスされることがあると述べておられた。だから、もし秋篠宮殿下がジェンダー平等に対してネガティブなお考えをお持ちなら、このようなあいさつに部分的な手直しを求められる可能性もあっただろう。しかし、そのようなことはされなかった。

なお、念のために付け加えておくと、皇室と国民の“区別”は憲法それ自体に根拠をもつ(おもに第1章・第3章)ので、ジェンダー平等の理念と齟齬そごしたり対立することはない。

ジェンダー平等と矛盾する現状の皇位継承

ところが、ジェンダー平等への前向きなお考えは、ご自身の「皇嗣(皇位継承順位が第1位の皇族)」としてのお立場と矛盾をはらみかねない。

なぜなら、ジェンダー平等の理念に即して女性皇族にも皇位継承資格を認めた場合、天皇陛下に敬宮としのみや(愛子内親王)殿下というお健やかでご聡明なお子様がいらっしゃるので、皇位の継承順序は当然、変更されることになる。これまで堅持されてきた、天皇との血縁の近さを重視する「直系(親→子→孫という親子関係でつながる系統)」優先の原則を維持する限り、「傍系(直系から分かれた別の系統)」の秋篠宮殿下、悠仁殿下よりも敬宮殿下の順位が先になるからだ。その時は敬宮殿下が“皇嗣”になられ、「皇嗣たる皇子」なので「皇太子」と呼ばれる(皇室典範の用語法では「皇子」「皇太子」は男女とも含む)。

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