忙しい授業の合間を縫って毎日毎日動画をアップ

と、ここまではよくある医学部受験生の物語だが、宇江さんが変貌を遂げていくきっかけになったのは、母親の何げない一言だったという。

「大学2年生の冬休み、岡山の実家に帰っていたとき、母がこんなことを言ったんです。『若いうちにやれることは何でもやっておいたほうがいいわね。私もミスコンにでも挑戦しておけばよかった』。この一言を聞いたとき、ならば私も今のうちに、と。大みそかの夜でした」

さっそくネットで「ミスコン」を検索すると、「2021ミス・ジャパン」の締め切りがまさにその日。大慌てで資料を作って応募すると、書類審査に合格。その後もとんとん拍子で広島県の代表になり、9月のコンテスト本選出場が決まる。こうなるとがぜんエンジンがかかるのが宇江さんの性格だ。

宇江美沙希さん 出典=『医学部進学大百科 2023完全保存版』(プレジデントムック)

「ミスコンには武器がいると思い、21年6月からTikTokを始めました。医学部生であることを活かすため、白衣を着て踊ったり、医学の知識や“医学部あるある”をテロップで流したり。でも、踊りも苦手だったし、動画編集も初めてだったので、最初の頃は10秒の動画を1本作るのに2時間くらいかかっていました」

医学部の仲間たちの力も借りながら、忙しい授業の合間を縫って毎日毎日動画をアップした。調べてみると一番バズる時間帯が午後5〜7時の間。この時間に投稿できるよう、1日のスケジュールを調整した。

「テーマを決めるのが大変でした。SNSで話題になっているトレンドを探して、それを医学部風にアレンジして。流行っている曲を見つけて、振り付けを覚えて……。見ている人が飽きないよう、10秒の中に情報を目いっぱい詰め込みました。もちろん大学の授業もあったので、『私、何やっているんだろう』と思ったときも(笑)」

しかし、苦労のかいがあって3カ月後にはフォロワー数が3万人を突破。そして、この頃になるとミスコンの準備も忙しくなってきた。

「15cmのヒールを履いてのウオーキング、スピーチや質疑応答の練習など、専門の講師のもとに通って練習しました。姿勢が悪いので、特にウオーキングは家でもずいぶん練習しました。大きな鏡も買って。足が毎日筋肉痛でした(笑)」