問題③わずかな預貯金を切り崩してまで資産運用を行うべきか

そもそも、聡子さん世帯の家計内訳を見ると、iDeCoとつみたてNISAの掛け金自体、貯蓄を切り崩して捻出していることが分かりました。

世帯の支出合計は、月60万7000円。収入は月65万7000円なので黒字額は5万円です。ここまではいいのですが、夫婦二人分のiDeCo4万6000円とつみたてNISA3万3000円、合計7万9000円だと、毎月の黒字分から出すには2万9000円足りない。この不足分を、貯金300万円から切り崩しているのです。貯金が十分にある家庭なら、貯金を投資にシフトさせていくこともありですが、生活防衛資金が十分とは言えない現状では好ましくありません。

大前提として、夫は年棒制でボーナスがないため、毎年かかる固定資産税や車検代、年数回行っているという旅行代、壊れた家電の買い替えなどの費用、加えてiDeCoとつみたてNISAの掛け金の不足分年36万円近くを合わせて、ざっと年100万円超は、この貯金から切り崩しています。収入が上がらなければ3年経たずに貯金が底をつくのは明らかです。

そこで苦肉の策として不動産を売ろうと考えたのでしょうけれど、前述の通り、思うように売却益がない上に年間200万円以上家賃が出ていく生活になると、早晩、生活は行き詰まります。聡子さんのパート時間を増やせば収入は増えますが、もし2人目のお子さんに恵まれれば、そうもいかなくなるでしょう。

打開策①やりたいこと=お金をかけたいことの優先順位を整理する

では、このご家庭は、どうすれば希望通りに資産を増やして行けるのか。私が提案したのは、まず、優先順位を整理することです。

投資がしたい、貯金も増やしたい、2人目も欲しい、子供の教育費もかけたい、23区内に転居したい、年数回は旅行に行きたい――、やりたいことが頭の中に乱立されているように見受けられたので、何を優先して進めたいか、順序立てて書いてもらいました。

その結果、「今はとにかく預貯金を増やしたい」というのが一番でした。投資はその次で、引っ越しも今は見送ろうと、ご夫婦で結論を出したそうです。夫婦で優先順位を決め、目標を共有する。これだけで、その後の貯金スピードは大きく変わります。