ギリギリ合格して入学しても勉強についていけるのか?

聖光学院の中学入試委員長・國嶋応輔先生は相関係数を具体的に示してくれました。

「入試得点とその後の成績の相関関係は『緩く』存在している、という程度です。例外のほうが圧倒的に多い。

データ分析すると、相関係数として0.3程度です。本校は第1回入試(2月2日)と第2回入試(2月4日)がありますが、1回目入試は500番台で不合格だった子が、2回目入試は100番台で合格することだってあります。その問題によって発揮される実力が大きく変動するということでしょう」

なお、相関係数は正と負の方向をマイナス1~プラス1までの強さで示すことで二つのデータ群の関係性を表します。

おおむね0.0以上~0.3未満は「ほぼ無関係」、0.3以上~0.5未満は「非常に弱い相関」、0.5以上~0.7未満は「相関がある」、0.7以上~0.9未満は「強い相関」、0.9以上については「非常に強い相関」があるとされています。

聖光学院の教員たちには、新入生たちの入試順位は一切伝えられないそうです。しかし、最後の最後で本人がその順位を知ることのできる場を用意しているとのこと。

「生徒たちは卒業式の日に自分が中学入試のとき何位で入ったのかを校長に直接聞くことができます。ですから、その日は校長室の前に列ができていますよ。そこで校長が『あなたは○○位』などと伝えています(笑)」

頌栄女子学院(東京都港区・女子校、156ページコラム参照)の広報部長・湯原和則先生は、中学校1年生に限っては入試得点との相関が見られると言います。

「正直、中学校1年生の成績は入試順位とある程度相関関係があります。しかし、不思議なことに1年経つと、ばらばらになっていくのです」

成城の入試広報室長・中島裕幸先生もこう言います。

「本校は追跡データを細かく取っていて、中学入試と定期テストの相関データもその一つです。それを分析すると、中学1年生の夏休みを過ぎたあたりから、入試の結果と定期テストの結果に関係が見られなくなります。入学したあとに学習習慣をどう育んだかが何よりも大切だということですね」

今回、成城からその相関データの一部を見せてもらうことができました(図表1)。入試でトップ合格した子は好成績を維持する傾向はあるものの、それ以外の層は学力分布が散らばっています。

これを見ると、「ギリギリで合格したわが子は大丈夫なのだろうか」という心配を抱く必要のないことが分かります。