デジタル機器が「一方向型」か「双方向型」か

もっとも、スクリーン・タイムという時間の長さの問題以前に、そのスクリーンを「一方向で使う」か、「双方向的に使う」かという問題のほうが大きい、と私たちは考えています。

「一方向型」は、ただたんにスクリーンでテレビやビデオ(DVDやブルーレイなど)をのんびり見ているだけのもの。テレビなどのハイビジョンモニタをネットにつなぎ、90分の映画を見るのは一方向型に近いかもしれません。

「双方向型」は、「見ている側の作業」が必要なもので、ネットにアクセスするものはだいたいこちらです。スマホやタブレットでユーチューブ映像を見るのも双方向型です。

たとえば、スマホやパソコンを使ってウィキペディアで調べ物をするのも双方向型です。スクリーンをただ見ているだけでなく、調べてそのページにたどりつき、画面をスクロールしたり、詳しい説明写真を拡大したり、引用元ページにジャンプしたりという作業をともないますから。

脳の発達が明らかに遅れる衝撃のデータ

私たちは、健康に問題なくふつうに成長している子どもたちを対象に、脳の発達の様子を3年間、MRI装置を使って観察する研究を続けてきました。この研究から、一方向型よりも双方向型のほうが、子どもたちに深刻な症状が出ることがわかってきました。

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一方向型に何の問題もないのではありません。一方向型でスクリーン・タイムが長くなる──たとえばテレビを長時間視聴する習慣が長く続くと、脳に発達の遅れが生じます。ただし、遅れが出る領域は、大脳皮質の一部に限られます。

ところが、スマホの長時間使用など、双方向性でスクリーン・タイムが長くなると、「大灰白質」(大脳皮質も同じ。大脳半球の表面を占める薄い層で神経細胞が並ぶ)と「大脳白質」(皮質の内側に白く見える部分で神経線維の層)の両方が、かなり広範にわたって発達に遅れが生じているという、衝撃的な事実が明らかになったのです。

一方向型のテレビを見ながら、スマホを操作してユーチューブを見る、ネットで調べるなどすると、一気に双方向型になってしまいます。

仲のよい友だち同士、たとえば日本がワールドカップ出場を決めるサッカー試合のテレビ中継をそれぞれの自宅で見ながら、「いまのプレー最高」「オフサイドだろ」「○○選手そろそろ替えどきじゃね?」などとスマホでやりとりする。

あるいは、同じテレビドラマを見ながら、「犯人はこいつ。なぜならば……」とSNSに書き込んで当てっこをする。和気あいあい盛り上がる結構な話に思えますが、そこには脳の発達度合いを左右しかねない大きなリスクがあることを、忘れるべきではないでしょう。