男子後伸び説の背景を考える

同じような言葉では、「男子のほうが後伸びする」も塾でよく聞かれるといいます。これも性別にもとづいた決めつけとしてはよくある話です。男子は多少成績が悪くても受験までに伸びるから、今から勉強すれば合格できる──。確かに過去のデータを平均すればそうなのかもしれませんが、男子生徒全員が後伸びするわけではないはずです。

塾の先生の中には、この言葉を親を安心させるための常套句として、「今は成績が悪くても大丈夫ですよ」と伝えるために使っている人もいるかもしれません。問題は本当にそう思い込んでいる場合です。もし平均を生徒全員に通用する事実だと信じ込んで指導している先生がいたら、僕はそんな塾に子どもを通わせるのは怖いなと思ってしまいます。

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男子は後伸びするというデータがあるのなら、それは親の進学熱やその子への期待が理由になっている可能性もあります。実際、「男の子だから将来は有名企業で高収入を得てほしい、だから難関校へ行かせなきゃ」と考える人はいまだに少なくありません。

そうした親御さんは受験が近づくと子どもに勉強するよう追い込みをかけるでしょうから、その結果として直前に学力が上がるということも考えられます。こうした伸びがデータとして蓄積され、またそれを経験で知っている先生が男子後伸び説を口にするようになったのかもしれません。

親も塾講師も女子に期待しなさすぎではないか

この場合、男子後伸び説は生物学的特性から生まれたものではなく、社会的な期待度の違いから生まれたものということになります。そうすると、ここにもうひとつ違う問題が見えてきます。

男の子だからこそ難関校への進学を期待する。これは裏を返せば、女の子だったらそこまで難関校を期待しないということでもあります。日本では大学の学部生はほぼ男女半々ですが、東京大学では長いあいだ女子の学部生が2割を超えていません。

これも、女の子に対してそこまで高い進学熱を持つ親御さんが少ないからではないでしょうか。親御さんや先生たちは、男子には期待する難関校→難関大学→有名企業というコースを、女子には期待しなさすぎなのではと思います。