無意識に行動を変える
牛丼屋もコンビニも倉庫も重要なのは、テンポが無意識に影響する点です。人間はゆっくりとしたBGMが流れている店内で、意識的に「ゆっくりしよう」と思って行動しているわけではありません。むしろゆっくりしようと意図すると、ゆっくりできないジレンマに陥りがちなので、無意識に働きかけるところがポイントです。
私たちは流れているBGMを後から思い出せないし、多くの場合、BGMが流れていた事実にすら気づいていないことが研究でも明らかになっています。
これは経験則としてもわかりやすいでしょう。
今日、昼食で入ったレストランや会社からの帰りに立ち寄った本屋でどのようなBGMが流れていたか覚えているでしょうか?
音が鳴っていても、ほとんど意識していないので、いつ音が鳴り、そして鳴りやんだかも認識していない可能性は高いです。BGMは意識なされてないからこそ、バックグラウンドミュージックなのです。
精神状態にも効果がある
むしろ、私たちは無意識のうちにBGMに精神状態を左右されている可能性が高いと言っても言い過ぎではありません。
ゆっくりとしたテンポには心を落ち着かせる効果があり、対照的に速いテンポは覚醒状態を作り出すこともできます。
スローテンポのBGMには、怒りを抑える傾向もあります。ですから、小売店や飲食店で行列ができてイライラしそうな人があらわれそうなときは、ゆっくりしたクラシックを流すことを試みるべきです。
アップテンポのBGMは、喜びや楽しみと関係なく、覚醒を高めます。通常は嬉しかったり、楽しかったりすると人は覚醒しますが、アップテンポのBGMはそういう意識とは関係なく、ただ単に覚醒を高めます。
例えば銀行の店舗でアップテンポな音を流すと、銀行員に対する親しみが増し、銀行員と笑顔で挨拶したり、おしゃべりしたり肯定的な行動が増えるのが実験によって確かめられています。