なぜ日本海側にばかり大雪が降るのか

冬の間、中国大陸の北部を冷たい空気が覆い、「シベリア高気圧」ができる。これは世界一重い高気圧で、過去に数回1080へクトパスカル台(ロシアほか)の気圧が記録されている。一方で、北海道の東の海上には低気圧ができて、日本を挟んで西高東低の気圧配置となる。風は気圧の高いほうから低いほうに向かって流れるので、間に挟まれた日本の上を西から東に冷たい風が吹き抜ける。風上では乾いていた強烈な寒風も、暖かな日本海の上を吹くことで水蒸気を補給され、日本に着くころには、湿った冷たい風へと変質している。

この風が、日本の南北に走る山脈にぶつかって上昇し、雪雲を作り、日本海側の地域に大雪を降らせるのである。日本海はまるで雪製造マシーンのようで、そこから降ってくる雪は「海水効果雪」と呼ばれる。

冬の衛星画像で見てみると、雲の筋が何列も並んでいることがある。さらに目を凝らしてじっと見ると、その中にひと際太い雲の帯が発達していることがある。これを「JPCZ」と呼ぶ。日本名は「日本海寒帯気団収束帯」だが長いので、英語名の頭文字を拾ってこう呼ばれることが多い。

どうやってできるのか。まずシベリアから吹く西の風が北朝鮮と中国国境の白頭山(ペクトゥサン)にぶつかって枝分かれし、分流した空気の流れが日本海上で合流して太い雲の帯ができる。このJPCZがかかる場所では特に大雪が降って、1日で1メートルも積もることすら珍しくない。先述した1927年の滋賀県伊吹山では、1日に2メートル超えのドカ雪を降らせたものだから、世界がたまげる積雪記録となった。

太平洋側では年間降雪量が減り続けている

では本題に戻ろう。なぜ温暖化でドカ雪が増えるのだろうか。そもそも暖かくなれば、雪が減るはずであり、実際、東京の年間降雪量は、30年前の平年値に比べて3割減、鹿児島は5割減、大阪にいたっては7割減となっている。

しかし、今後は日本海側で雪がどさっと増えていくかもしれないという。一体どういうことなのか。それは日本海の海水温の上昇で、大陸からやってくる風にたくさんの水蒸気が補給され、しかもたとえ気温が上がったとしても、北海道や北陸の山地などでは氷点下のままだからドカ雪が増えるだろうと予想されているのだ。実は同じような理由から、カナダとアメリカの国境にある五大湖周辺で降る雪もまた増えていくかもしれないそうである。