ゴールドマン・サックスの採用面接で投げかけられた「ある質問」

今から、すこし昔話をしたいと思います。自分が大学生時代、ゴールドマン・サックスの採用面接に参加した時の話です。

いわゆる一次面接にあたる段階で、何千通もの書類選考から厳選された100名程度の就活生が、日本の本社である六本木ヒルズ46階の応接フロアに集められました。静かに待機する100名は順番に名前を呼ばれ、5人ずつのグループに分けられると、AからMまでの番号が振られた会議室を所定の順番で回るように指示されました。

ノックして会議室に入ると、そこには2名の面接官が待機しており、15分程度、いくつか質問に答えてから次の会議室へ移動します。この工程を繰り返し、総合評価で一次面接の結果が決定する、という段取りでした。

10年も前の話になるので、どんな質問を受けたのかはほとんど忘れてしまいましたが、その中に1つだけ、今でも忘れられない質問があります。

“今からあなたと私がゲームをします。この丸いコースター(※)が無限にあると仮定して、それをあなたと私が交互でこのテーブルの上に置いていきます。ただし、それぞれが重なることのないように置かなくてはいけません。

ゲームの勝敗はこれ以上テーブルの上にコースターが乗らなくなった時に決し、先に置けなくなった方が負けとします。さて、このゲームにおける必勝法はありますか? そして、あるとすればそれは何ですか?”

※コースターは歪みのない丸で直径5cm程度。机は長方形で、表面の平らなもの。机の大きさは一般的な8人掛け用のものでしたが、これは今回の問題の答えに影響を及ぼしません。

写真=iStock.com/dmitriymoroz
※写真はイメージです

いかがでしょうか。制限時間を1分として、是非考えてみてください(次の小見出しに答えがあります)。

ゲームも人生も非対称なリソースを見極められるか

答えは、

●必勝法は存在する
●必勝法は①先攻を選び②一手目でテーブルの真ん中にコースターを置く③その後は、常に相手が置いたコースターと点対照の位置にコースターを置き続ける。

というものでした。

そして、そのとき答えと考え方を解説してくれた社員の言葉が非常に印象に残っています。

それは「両プレイヤーに対し、コースターも机のスペースも十分な数が与えられているこのゲームにおいて、非対称なリソースが1つだけあります。それは『テーブルの中心』です。

このことに気がつき、これをどう活かすかという観点から考えを始めることができれば、自然と先攻を選ぶことができ、テーブルの中心を抑えることが鍵を握ると気づくことができます。そうすれば必勝法に辿り着いたも同然と言えるでしょう」という言葉でした。

ここからが本題です。では、生きる人全てに共通する、人生において非対称なものとはなんでしょうか?

それは“時間の進み方(過去から未来へと一方向に進む)”です。仮に人生に必勝法があるとするならば、コースターの問題と同様、この非対称性をどう活かすかという考え方は良い人生を作る上で非常に重要になってくるでしょう。

また、投資の世界には“Compound interest is man’s greatest invention.(複利は人類最大の発明)”という言葉があります。

これもつまり同じ意味合いですが、何かわかるでしょうか? それは一方向にしか進まない時間の流れを味方につけ、時間の経過が自分にとって有利に働くような意思決定をし続けることが重要だ、ということに他なりません。