子供の症状を保護者と園で確認すればいい

こうした感染症について、医師が登園許可証や治癒証明書を書く必要がないのは、各感染症の登園可能になる条件をクリアしているかどうかを、保護者と園が個別に確認すればいいからです。つまり必要に応じて投薬などをしながら決められた日数を自宅などで過ごし、熱が下がり、咳や鼻水などの症状が大体おさまり、全身状態が落ち着いていて、食欲があるかどうかなどをチェックするだけで構いません。それなのに、どうしてわざわざ小児科を受診して書類を頼む慣習が広まったのか、とても不思議に思います。意味がないからです。

もしかしたらですが、子供の感染症がおさまっていないのに登園させるケースを恐れる人が多いからかもしれません。確かに「解熱剤を飲ませて登園させた人がいて」「まだ咳がひどいのに登園した子がいて」などという話を聞くことはありますし、実際にそういうことがあると園で感染症が蔓延するのではないかと心配になりますね。園としても判断に困るため、専門家である医師に委ねたいのかもしれません。でも、医師も園の先生方と同じで、子供が発熱した日や経緯は保護者の話からしか知ることができませんし、処方薬の内服をしているかどうかなども同じです。本来、出席を停止するのも許可するのも学校長や園長などの教育・保育施設側のはずですし、普段の様子も保護者や園のほうがよくご存じでしょうから、やはり個別に判断したほうがいいと思います。

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感染症の治癒は証明できないもの

そもそも医師の立場からすると、登園許可証はまだしも、治癒証明書には非常に違和感があります。現実的に「治癒を証明する」ことは難しいからです。いったん感染症にかかると、症状がおさまってからも、ある程度の期間はウイルスが出続けることは少なくありません。たとえば手足口病の場合、症状が治っても3〜4週間は便からウイルスが排出され続けます。ですから「症状が改善した」「感染リスクが低くなった」とは言えても「治癒した」「感染しない」と断言することはできません。しかも、乳幼児は感染症が治癒した先から、次の感染症にかかることもあるでしょう。かといって長期間ずっと出席停止にしたら、誰も保育・教育施設に通えなくなってしまいますね。

少し前に水いぼを摘除したばかりの子供の保護者から「園から医師による治癒証明書がないとプールには入れないと言われたので書いてください」と言われました。しかし、水いぼの自然経過は長くて5年くらいです。つまり、摘除したばかりなら絶対に治ったとはいえません。ですから、現段階で治癒証明書は書けないこと、ただし絆創膏ばんそうこうなどで覆っていればプールには問題なく入れることを伝えました。しかし園が納得してくれなかったのか、保護者の方は別の医療機関で治癒証明書を書いてもらったそうです。厳密に言えば違法行為になりますし、こんな面倒で意味のないことはやらないで済むほうがいいでしょう。