昭和オジイサンたちに「ご退散いただく」方法

2022年4月に東証は3部制に移行した。それを見越して、大企業では「親子上場」を解消する動きが進み、さまざまな業界で再編が起こりやすくなると指摘している記事を見かけた。ありそうな話ではあるが、問題は再編対象となる社長と役員だろう。

買われる側の社長は自分の立場を守るために反対し、買う側の役員は自分の天下り先がなくなるから反対する。要するに会社や社員や株主のためではなく、自分の保身のための抵抗である。

そういうオジイサンたちには、少しばかりのカネか、それに代わる名誉を与えて去ってもらったほうが日本経済のためだろう。

たとえば、こんな方法はどうだろうか。

3部制への移行で、最上位のプライム市場には東証1部から1800社以上が組み込まれるという。だが、その上に「スーパープライム市場」をつくり、コングロマリット型大企業、すなわち経団連企業200社程度を閉じ込めるのだ。

スーパープライム市場の上場企業の経営者には、勲章でもくれてやればいい。サラリーマン素人経営者は、今生こんじょうで最高の名誉と大喜びするだろう。

かくして抵抗にあうことも恨みを買うこともなく、昭和を封じ込めるという目的は果たされる。一方、本当に将来性のある企業には資金が投入され、万々歳だ。

「東京が最先端」は都市伝説。光明は地方企業にある

クラウドサービスなど使えるものはどんどん使え。そんな本書での冨山さんの話を受けて、なるほど、「身軽さ」「フットワークの軽さ」というのも、これからの企業の生き残り条件であると思った。

実際、地方からのダイレクトアクセスで世界とビジネスをしている日本企業は少なくない。グローバル化とデジタル革命によって、地域と地域、国と国という物理的距離の障壁がほぼ消滅し、フットワークが軽くなっている。

私が注目している企業も、大半は太平洋ベルト地帯に沿うような形で、地方にある。

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代表例の1つが、静岡県浜松市にある浜松ホトニクスだ。「この会社がなくては物理学の研究が成立しない」といわれるほどの存在になっている素材メーカーである。

同社の技術が、ノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者、ピーター・ヒッグスの予測した「ヒッグス粒子(※2)」の発見に寄与したことはよく知られている。今も新粒子発見の研究に貢献していて、宇宙生誕の謎を解くためには同社の技術が欠かせない。

実は、浜松ホトニクスは海水の重水素からクリーンエネルギーを生み出す「レーザー核融合(※3)」の研究も行なっている。この技術が確立・実用化されたら、人類の共通課題といえる温室効果ガス問題を一気に解決できる可能性が高く、浜松ホトニクスには世界から視線が注がれているのだ。

他にも、たとえば長野県なら、アメリカのボーイング社との直接取引で制御装置用機器を製造する多摩川精機(飯田市)や、高度なセンサー技術と電磁弁制御を組み合わせた自動水栓を製造するバイタル(佐久市)がある。

日本の地方には、こうした「実はグローバルに活躍している超優秀な中小企業」がたくさんある。「東京が一番進んでいる」というのは、今や一種の都市伝説にすぎなくなっているのだ。大阪にも同じことがいえる。産業は、むしろ地方のほうが熱いといってもいいくらいなのだ。