別れたくないモラ夫たち

大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法』(日本法令)より(漫画=榎本まみ)

モラ度(=モラハラの程度)が高まっていくと、妻や子どもたちにとって、家庭は極めて居心地の悪い場所になっていく。やがて、「婚姻破綻」と法的に評価される直前の状態へ進む。そして妻は離婚を意識し始め、周囲に相談したり、弁護士に相談に行ったりし始める。

夫が妻の不足を日々探しては非難してくるので、妻は「自分は女性として、妻として不十分である」との認識を強くしていく。ところが、夫は妻に対するモラハラに依存している(モラハラにより多幸感を得るので、やめられない状態)ため、妻はモラ夫にとって必要不可欠な存在でもある。そのため、妻から離婚を突きつけられた多くのモラ夫たちは、「妻はダメな女性(妻)であり、俺がいないと生きていけない」などと言い張り、離婚に反対する。

なお、モラ夫は育児に関しては、妻(女)のするべきことと考えているためか、「子どもをよく育ててくれたことには感謝している」「妻としてはダメだが、母としてはよくやっている」と肯定的評価であることも多い。

妻に対するモラハラが高じていくと、多くのモラ夫は「離婚するぞ」と妻を脅すようになる。離婚問題で相談に来た妻は、「主人は離婚に同意しています」と説明する。詳しく確認をすると、妻をディスった後や説教の最後に、「離婚だ! 出てけ!」などといつも言うとのことだ。これを真に受ける妻が少なくないが、ほとんどの場合、これは単なる脅しである。

怯える妻、「よい夫」に擬態する夫

この段階に至ると、多くの妻は夫に対して恐れを抱き、怯えきっていることが多い。夫の帰宅時間が近づくと動悸どうきが激しくなったり、玄関の鍵が開くガチャ音で口から心臓が飛び出しそうになる。ここまで被害が進行していなくても、ストレスから心身症になったり、うつ症状や適応障害を抱えるなどしている被害妻は多い。

妻は夫に対して、嫌悪感、違和感、恐怖などのネガティブな思いを抱きつつも、日々我慢する。そして、モラ夫に怒られないようにと気を遣って振る舞うのだ。他方、モラ夫は対外的には「よい夫」「優しい夫」に擬態しているので、周囲からは「優しい旦那さん」と見られていることも多い。そのため、表面的には仲のよい夫婦に見えたりする。しかし、妻がその我慢の限界を超えると、家庭内別居へと進むことになる。