「勝敗以前にけがをしないか心配」
甲子園出場を目指して「野球漬け」の日々を送っている学校と、「学ぶ機会の確保」が前提で野球など「部活」は「余技」の域を出ない学校が対戦する。両校の生徒は体格からして異なっていたはずだ。
高校野球の審判は「近年学校の実力差が広がっている。強豪校の選手のものすごい打球が素人同然の相手選手の横をすり抜けている。勝敗以前にけがをしないかひやひやする」と懸念の声を漏らす。
82対0という試合は「何が何でも勝たなければいけない」高校と、「野球にアクセスするのが精いっぱい」の高校が対戦したことによる、当然の結果だと言えるのだ。
「野球の格差拡大」を前に何もしない高野連
こうした現象は全国に広がっている。中には実力格差の拡大によって有力私学が甲子園出場をほぼ独占する地方も出てきた。
福島県:聖光学院が夏の甲子園に2007年から19年まで13年連続出場(2021年は日大東北)し、今年も出場。春の甲子園も5回出場。
日本高野連がこうした「野球の格差拡大」の是正に乗り出しているようには思えない。
有力私学と他校の実力格差を解消するためには、部員数を制限するのが有効だ。
1学年20人、全体で60人を上限とすれば、野球がやりたい子供は他校を選択する。そのほうが「試合に出場できる生徒」は確実に増えるはずだ。しかしそうした施策が検討された形跡はない。
また特待生も廃止すればよいはずだ。
事実、2007年には高校野球の「特待生問題」が社会問題となり有識者会議が設置されたが、一部私学の強硬な反対にあって高野連側が軟化し、人数や待遇面に一部手を入れただけで特待生は存続された。
要するに今の高校野球は一部私学の「甲子園出場モデル」を容認し、その他大勢の学校、特に部員数割れするような学校にはあまり気配りしていないのだ。
強豪校の監督の中には「連合チームが増えていますね」と水を向けると「ま、そういう学校の生徒さんはけがしないうちにさっさと引っ込んでもらえばいいんじゃないかな」と言う人もいる。