経営学の世界では、クリストファー・A・バートレットとスマントラ・ゴシャールという著名な経営学者が、『個を活かす企業――自己変革を続ける組織の条件』(ダイヤモンド社、新装版、07年)において、エンパワーメントがうまく機能する条件として、(1)情報や資金などの戦略的資源の提供、(2)従業員が自分で自分を規律づけるための仕組みの整備、(3)従業員がストレッチするための環境整備(能力開発やチャレンジなど)、そして(4)経営者のもつ理念への信頼をあげている。
具体的に従業員へエンパワーされた仕事とキャリアを提供するには、3つの支援が必要だ。1つは仕事を注意深く選んで与えること、2番目は達成過程でアドバイスなどの支援をすること、3番目はしっかりとフィードバックすることである。
しかし、今の日本の企業は真の意味でのエンパワーメントが達成されているとはいえない。その理由は、現場リーダー、ミドルマネジャークラスがエンパワーされていないからだろう。私は、様々な企業の現場のリーダーやミドルマネジャーのヒアリングを15年ほど続けているが、自分たちは何の権限も与えられていないと感じている人が恐ろしいほど多い。