駅や空港も……「秋田全体」があじさい県化しつつある
古仲さんが頭を悩ませているのは、駐車場の問題だ。参拝客が集まるようになって120台ほどは停められるように整備した駐車場もすぐに手狭になった。近隣からの苦情も寄せられるように。少なくともあと100台ほど停められる駐車場は必要だ。
「お寺と地元の誰もがあじさいの恩恵を受け、不幸にならない体制に早くもっていきたい」(古仲さん)
あじさいのシーズン中、雲昌寺はキッチンカーや出店で賑わう。秋田名物のババヘラアイス(氷菓)の青色バージョン、プリザーブドフラワーの技術でつくられたあじさいのグッズや、レモン汁を入れると青く変化するあじさいティーなどを販売する。また、ひとつとして同じ柄がない「あじさいお守り」や「あじさい御朱印」も人気を博している。
こうした販売にかかわる労働力は、地元の人の雇用によって賄われている。シーズン中の人件費は300万円ほどになるが、「収益も大事だけれど、過疎地にあって雇用を生むことはもっと大事」と、古仲さんは考えている。
近年は近隣の高齢者施設に頼んで、入居者に株分けや、お守りの中にあじさいの花びらを入れる作業を手伝ってもらっている。男鹿半島には子供は少ないが、高齢者は多い。
入居者によって株分けされたあじさいは、1シーズンで300~500株にもなる。春になってしっかりと根付いた株を、寺に戻してもらうようにしている。高齢者は花を育てることで喜びや充足感を得られることはもちろんのこと、施設には株分けの対価が支払われるという仕組みだ。
こうした地元を巻き込み、今も株分けされ続けているあじさいは、雲昌寺の外でも花開き始めている。昨年3月に新駅ができたJR奥羽線泉外旭川駅の駅前花壇には、地元の子供らと一緒にあじさいの植樹がなされた。
また、JR秋田駅や地元小中学校の校庭でも雲昌寺のあじさいが咲くほか、秋田空港でも来春に植樹が計画されている。県内各地に、青あじさいが拡大し続けているのだ。