小論文を書くスキルをどのように授けたのか

――福岡女子商業高校でも同じやり方をしたんですか?

『プレジデントFamily2022年春号』

自分なりにアレンジはさせてもらっています。高3の春から始めて講座を週1回やって、特に力を入れるのは夏休み以降。3カ月間ぐらいが勝負です。夏休みは毎日指導しますね。週3日講座をやって、週2日は自由に小論文を書く時間にしています。

――例えば、どんなテーマで小論文を書くのでしょうか?

講座ではまずは生徒の身近な問題から取り上げます。たとえば「焼肉食べ放題って行ったことある? 食べ放題で食べていたら、途中で『もう肉がありません』って言われたとしたらどう思う?」という話から始めます。実際は「すいません、品切れです」という状況は聞いたことがない。そこで、生徒には「ということは、食材を余らせるくらいに仕入れることが前提になっているのかもしれないね」という話をしながら、フードロスや環境問題の話につなげてディスカッションしていきます。

――「フードロス」といったキーワードを学んでいくんですね。

写真=学校提供
小論文ノート

このような「小論文ノート」を生徒それぞれが作っているんです。5cm以上の厚さのものを、1、2冊持っています。それで、自分が興味を持った言葉やわからない言葉を調べていくんですね。テーマは「フードロス」のほかにも、「裁判員制度」「男女格差」「ダイバーシティ」「貧困問題」など。小論文の入試で取り上げられそうな言葉の意味を調べて、問題点や解決策について自分の意見を書く。そんなノートを何カ月も必死に作っていたら、変わっていきます。

――ノートに学びを蓄積していくんですね。

受験した子たちが作った小論文ノートを、後輩のために高校に置いていってってお願いしたらみんな嫌だって言うんですよ。卒業アルバムのようにしんどかったときに見直したいとか、大学の授業でも役立ちそうだからって。

写真=学校提供
小論文ノート

――分厚い小論文ノートをそれぞれが作るとはいえ、たった半年で小論文を書く力って身に付くのでしょうか?

半年あればある程度のところまで持っていくのは十分可能です。大人だとちょっと難しいかもしれないですけど、やっぱり高校生ってすごいんですよ。興味を持って学ぼうとしたら一気に伸びていきます。短期間だからこそできる、という面もありますね。

原稿用紙を見て、最初は「うわ~」とか生徒から嫌がられますけれど、書くことを続けていくとだんだん書くことに慣れていきます。