どんなに結果を残していても暴力は一発でアウト

強豪チームの運動部は上下関係が厳しく、指導者が絶対的な存在として君臨するケースが大半だ。チーム内のライバルも多いため、試合に出場するには指導者に嫌われることはしたくない。そのため大きな権限を持つ指導者から暴力があったとしても声をあげにくい。わいせつ行為なども同様だ。

以前、名門駅伝校の監督が暴力行為などのパワーハラスメントを行っていたとして解任された。その監督は熱心な指導で知られており、全国大会でも素晴らしい成績を残してきた。選手たちも監督の指導力をリスペクトしていたように思う。しかし、そこに暴力があった。『フライデー』の取材に応じた元選手はこんな悲痛な声を残している。

「もう、あの人の顔を見ることさえ耐えられないんです。監督がいる以上、このチームで走り続けることはできません。本当はもう一度、箱根駅伝を走りたかった。できたら実業団で陸上を続けたかった。でも、今では走ること自体が嫌いになってしまいました……」

どんなに素晴らしい結果を残したとしても、体罰をしないとチームをまとめることができない指導者は三流だ。いや、社会人失格といえるだろう。

出所=『運動部活動等における体罰・暴力に関する調査』公益財団法人全国大学体育連盟

大昔は指導者の暴力、先輩からのしごきは当たり前だったかもしれない。しかし、現在は2022年。年号は昭和でも平成でもない。中高生もスマホを操る時代。「体罰」がどれだけ愚かな行為なのか。少し調べれば、わかってしまう。

「暴行罪」は1年以下の懲役または10万円以下の罰金、「傷害罪」になれば15年以下の懲役または50万円以下の罰金だ。一方的な暴力でケガを負わせるような状況だと、上記の罰則が科されやすくなる。

また各都道府県の教育委員会では教職員による体罰、わいせつ行為などに対して、標準的な処分を定めている。東京都教育委員会の場合は以下の通りだ。

・「体罰により児童・生徒を死亡させ、又は児童・生徒に重篤な後遺症を負わせた場合」「極めて悪質又は危険な体罰を繰り返した場合で、児童・生徒の苦痛の程度が重いとき(欠席・不登校等)」は免職。
・「常習的に体罰を行った場合」「悪質又は危険な体罰を行った場合」「体罰により傷害を負わせた場合」「体罰の隠ぺい行為をした場合」は停職・減給。
・「体罰を行った場合」は戒告。
・「暴言又は威嚇を行った場合で、児童・生徒の苦痛の程度が重いとき(欠席・不登校等)」「常習的に暴言又は威嚇を繰り返した場合」「暴言又は威嚇の内容が悪質である場合」「暴言又は威嚇の隠ぺい行為を行った場合」は停職・減給・戒告。

相応のペナルティが発生するにもかかわらず、運動部活動の現場では暴力行為が後を絶たない。しかし、指導者が処分を受けることは非常に少ない印象だ。なぜなら暴力は外部の目が届かない密室で起きており、かつ選手が声をあげにくいからだ。

だからこそ「ドーピング」と同じぐらい厳格に取り締まりを強化する必要があるのではないか。