体罰経験者ほど体罰が「必要」という思いが強い

公益財団法人全国大学体育連盟が「運動部活動等における体罰・暴力に関する調査」を2013年にまとめている。ちょっと前のデータになるが、恐ろしい実態が明らかになっている。

体罰を受けたその後どうなぅったか(男女別)
出所=『運動部活動等における体罰・暴力に関する調査』公益財団法人全国大学体育連盟

運動部活動経験者3638人(13大学、2短大)のうち20.5%が過去の運動部活動において「体罰経験がある」と回答。その時期は「中学」が59.1%と最多で「高校」も54.0%と多かった。

「体罰の頻度」は「ほぼ毎日」が10.0%、「週に2~3回」が26.8%。調査によると日常的に体罰があることを物語っている。

「体罰・暴力に至る主な理由」で最も多いのは「ミスをした場合」で28.5%。指導者の体罰が選手のプレーをさらに委縮させる原因になっているおそれがある。また「理由はわからない」という回答も5.4%あった。これは不機嫌だった指導者が選手に八つ当たりしている可能性も考えられる。

筆者がもっとも怖いと感じたのが、「体罰を受けたその後どうなったのか」という項目(複数回答可)だ。なんと「精神的に強くなった」と感じている人が58.4%もいたのだ。一方で「反抗心を持った」は35.4%しかいなかった。また「試合に勝てるようになった」は10.7%。

「運動部活動中の体罰・暴力の必要有無」については「必要」が40.9%、「不要」が57.3%。性別でいうと男性の51.7%が「必要」だと回答している。さらに体罰経験がある者は57.8%が「必要」というアンサーだった。体罰経験のある男性はかなり高い割合で体罰が必要だと考えていることが浮き彫りになっている。

体罰・暴力の必要有無(体罰経験有無別)
出所=『運動部活動等における体罰・暴力に関する調査』公益財団法人全国大学体育連盟

さらに恐ろしいのが「将来運動部活動等のスポーツ指導者になりたいか」の回答だ。「強くそう思う」が10.1%、「そう思う」が20.7%。これが体罰経験者になると「強くそう思う」が19.6%、「そう思う」が31.0%と跳ね上がるのだ。

体罰経験者こそ「体罰が必要」だと感じているだけでなく、将来は「運動部の指導をしたい」という熱い思いを持っている。この現状を考えると、運動部活動で体罰が“消滅”することはないだろう。

種目間の人数に偏りがあるため断定はできないが、柔道、バレーボール、バスケットボールで体罰が多いというデータも出ている。いずれも室内での活動がメイン。ここからは推測になるが、校庭やグラウンドで行われる部活動は外部の“目”があるため、体罰が少ないのではないだろうか。秀岳館高男子サッカー部の動画が撮影されたのは、同部の寮のなかとみられている。いわば密室での“犯行”だった。

体罰を行う者は「体罰がバレたらマズい」という思いを持ちながらも、体罰をやめられない思考回路になっているようだ。