将来の計画

現在72歳の義母は、2021年9月からショートステイを追加。最近はさらに認知症の症状が進み、下の世話まで必要になってきている。大の方を失敗し、タオルから壁から床から、トイレを汚物まみれにしてしまうことが少なくないため、七瀬さんは子供たちに触らせないように、急いで掃除をするのが日課になっていた。

「高度アルツハイマー型認知症の義母は、都合の悪いこと全てを人のせいにします。中でも私は家政婦であり、物を隠す嫌がらせをする人らしいのですが、病気だし、しょせん他人だしと、割り切れるようになるまでには私も成長しました。でも、子供たちのことを一番に考えたいのに、どうしても義母に時間を取られることがとてもつらいです」

先日は、七瀬さんがキッチンで料理をしていたら、自室から出てきた義母が、「あら、いらっしゃい」と笑顔であいさつしてきたという。

「ずっと無理して、ストレスをためながら同居して、介護や家事全般頑張ってきたのに、義母の記憶に私はいないのだと思うと、やりきれない思いでいっぱいになります」

そんな七瀬さんは、子供がもう少し大きくなって時間ができたら、仕事に出たいと考えていると話す。

「義父の行動が原因で、夫とは何度か離婚話をしています。最初の離婚話は、同居してから半年後くらいの頃でした。正直、夫のことも、もう大嫌いですし、義家族もろともサヨナラしたいと考えています。でも現実問題としてお金の問題があるのと、自分が片親育ちで寂しい思いをしたからこそ、子供たちには両親そろっていたほうがいいと思い、別れられません」

七瀬さんは子供の頃、親が参加する学校行事も一人、小学生の頃からは病院にかかるにも一人、初めて生理になったときも、ブラジャーを買うにも、たった一人だったという。

写真=iStock.com/yuruphoto
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七瀬さんが離婚話を切り出したとき、夫は七瀬さんに暴言をまくし立てた。揚げ句、「お前がいなくなったら、俺がおふくろの介護をすることになるから、収入がなくなって養育費なんて払えなくなるからな!」と言う。そのとき七瀬さんは、「この人はなんだかんだ言い訳して、養育費を払わない人だ」と悟り、「仮面夫婦でもいいから、子供が独り立ちするまでは夫婦を続けよう」と七瀬さんから提案。夫もそれに同意した。そのくせしつこく、「3人目がほしい」などと言い寄ってくる。

「これだけ『同居がストレスだ』と言っても結局何も伝わっていない。毎日本当につらいです。結婚相手を間違えました。私自身は、子供が小さいうちは家にATMがあると思って生活するしかないと割りきっていますが、子供にとっては、仮面夫婦も片親もどちらも申し訳ない。だから子供が成人、もしくは私が自身で生計を立てられるようになったら、離婚しようと考えています」

すでに義母は、ケアマネジャーや施設のスタッフからも、「施設を検討したほうがいい」と勧められるほどの状態にもかかわらず、夫も義父も、別に暮らす義弟までもが猛反対。「食糞するくらいにならないと施設には入れない」と言い張る。

七瀬さんを取材して感じたこと。それは、夫も義両親も、まるで『アリとキリギリス』のキリギリスのように短絡的に生きているということだ。今はまだ、七瀬さん自身も30代で若くて健康だから回っているが、七瀬さんが倒れたときや、七瀬さんに見捨てられたとき、この家はたちまち立ち行かなくなるだろう。

実父のがんも心配だ。子供たちが幼く、将来が不安なのは承知の上だが、失敗した結婚に早く見切りをつけて、後悔のないように生きてほしいと願ってやまない。

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