ステルス値上げを止めるには減税が必要

いまのところ日本は製造業の調子がいいのだが、その理由は単純に言うと円安である。円安により日本の輸出競争力が上昇しているわけである。

これも私がずっと主張してきたことだが、世の中は“ドル不足”だと、ドル高になる。さらに今後、いまのドル高傾向は強くなると思っているので、円安で日本の輸出企業が恩恵を受けることはおおいにあり得る。

ただし一方でコモディティ高の状況での円安は、あらゆるモノの価格を押し上げてしまう。特に日本のなかで、内需関連の仕事をしている企業にとっては苦難が待っている。とりわけ原材料を輸入に頼っているところは値上げ必至で、それが最終的には消費者に転嫁されていく。すでに食料品などは、値段は据え置いても量が少なくなるステルス値上げが日常化した。さらに少しずつ値上げをして、輸入材料の上昇を価格に転嫁する企業も増えてきた。

こうした状況下において日本政府は、本来ならば減税を実施すべきだと思う。たとえば消費税をもう一回5%に戻すのだ。

政府が条件をつけて10万円を配ったりしてもまったく無意味で、配るなら全員に配って、配らないなら配らないというやり方にしたほうがよかった。私は消費税を5%下げるか、もしくは消費税を還元するというやり方がいいと考える。たとえば大きな買い物で支払った消費税を5%還元するというやり方もある。

バブルのトラウマを抱える日本人

設備投資をしたり、その国の未来に投資するのが本来の投資手法なのだが、いずれ過剰投資が起きて、投機熱に浮かされるようになる。そして、その逆は先進国の上場会社が設備投資をせずに、自社株買いで自社の株価を吊り上げることに血道を上げていることだ。

設備投資をしないことは、最終的にはインフレを生まないし、高成長も生まない。だから世の中で、特に先進国は低成長に陥っている。これをジャパニフィケーションと呼んでいる。日本で最初に起きたことだからである。

日本がバブルのときは現金の価値が低く、不動産や株式などのリスク資産の価値が高かった。バブル崩壊後に日本で何が起きたかというと、日本の会社、特に銀行セクターは大量の不良債権を抱えていたが、それを国が救済した。もう一つは、膨大な人たちが不動産や投資で大損をしたので、現金の価値が高まった。

現在はもうその必要性はないのだが、心理的な状況はいまでも続いていて、日本人は現金をすごく大事にする。それはバブルのトラウマを抱えているからだ。

だから、日本はデフレから抜け出せない。結局、現金のニーズが高まっても、日本人はバブル前よりもお金を借りなくなってしまった。銀行に借りに行かない。銀行から遠のいてしまった。そうなると、デフレ脱却は無理なのだ。お金は中央銀行がつくっているのでなく、信用創造でつくられるわけだから、誰かが銀行で積極的に借金をしない限り、社会に出回るお金は増えない。

したがって、他国に資金を貸し出すキャリー体制とは、本質的にはインフレになりにくい、デフレ的な環境といえる。