高校の義務教育化で社会コストが下がる
私が民主党の幹部に言っていることは、実は大阪都の動きこそが彼らの従来から提案してきたことに一番近く、足を引っ張るどころか自分たちの実績を示せる貴重な機会だ、ということだ。
民主党が09年の衆議院選挙で掲げたマニフェストは七夕の短冊のようなウィッシュリスト(思い付きアイデア集)で、整合性の取れた全体図として成立していない。そこには全国の市町村を人口30万人規模の基礎自治体として再編し、財源と権限を委譲して地域主権を確立するという旨が記されている。しかし基礎自治体と国家の関係がどうなるのか、基礎自治体がどうやって経済的に自立するのかなど、基礎自治体の権限や責任が不明瞭で、概念として中途半端なものとなっている。
そこでまずは基礎自治体の役割を、生活基盤を充実させて、生活者に安心・安全を提供することと位置づける。すると産業基盤の充実や雇用の創出を担当する上位概念が必要になり、それが人口1000万人規模の地域国家である「道州」の基盤となる。要するに基礎自治体と道州の役割を明確に分けて、この二階層で日本を統治するのだ。
大阪都構想でいえば、大阪都の下で横並びになる30くらいの市区町村(いまは43ある)が基礎自治体。一方、広域行政を一本化した大阪都が道州の役割を担う。いずれ関西経済圏を結集させた「関西道」や大阪都と京都が一緒になった「本京都」のような広域行政区域にまで発展すれば、強力な産業ユニットが誕生することになるだろう。関西道のGDPは1兆ドルで、国でいえばメキシコ、韓国、オランダ並み。しかも真ん中からクルマで1時間半でカバーできる密度の濃い経済圏となる。
統治機構を基礎自治体と道州の二層構造にすることで、難解な知恵の輪のように入り組んでいた問題がきれいに整理できる。たとえば税制がそうだ。
私が提案する道州制の税制は極めてシンプルだ。法人税も所得税も相続税も廃止し、「資産税」と「付加価値税」の2本立てにする。基礎自治体は住民や企業から資産税(所有する資産にかかる税)を、道州は企業と個人から付加価値税(「売り上げ-購入原価=付加価値」)を徴収し、それぞれの活動財源にするすみ分けが一番妥当だ。私の試算では1%程度の資産税で2兆5000億円、10%の付加価値税で8兆円となるので必要な税収はすべてカバーできる。不平等かつ複雑な税体系は一切不要。不動産取得税や自動車税、重量税、ガソリン税、相続税などの不要な税金はすべて廃止すればいい。
政府与党は「税と社会保障の一体改革」などとまやかしを言ったり、消費税の増税に固執せず、大阪都で抜本的な税制改革の先行実験にチャレンジさせればいいのだ。