韓国経済をさらに衰退させる追加利上げのリスク
一つは、インフレである。世界的なエネルギー・原材料価格の上昇とウォン安などにより、消費者物価上昇率が21年10月以降3%台で推移している。韓国銀行は21年8月からすでに3回の利上げを実施した。
注意したいのは、米国でこの3月を皮切りに、年内に数回の利上げが見込まれることで、そうなれば、為替の安定化を図るために、韓国で追加利上げが行われる可能性が高い。短期間での急激な利上げは消費と投資の鈍化、債務返済負担の増加、株価の下落などをまねくことになる。
すでに株価は長期金利の上昇と地政学的リスクの影響で、世界的に調整局面に入っている。記事「『大卒でも就職できず借金で株式投資…』韓国の若者が文在寅政権に恨みを募らせる当然の理由」でも紹介したが、韓国では近年、住宅投資と若者による株式投資が急増したため、変動金利で融資を受けた場合の影響は大きい。
大企業の投資先を海外から国内に向けられるか
もう一つは、中国経済の減速である。21年の韓国の対中輸出依存度は25.3%と高く、中国景気の影響を受けやすい。中国の成長率は21年に8.1%になったが(年後半は4%台)、22年はゼロコロナ対策の影響もあり、5%程度に低下するものと予想される。
こうしてみると、次期政権はインフレを抑制して安定成長を図りながら、次世代成長産業の育成や良質な雇用の創出、住宅価格の抑制などが課題になる。
良質な雇用の創出は、少子化(合計特殊出生率は21年に過去最低の0.81)に歯止めをかけるうえでも重要である。住宅価格や教育費の上昇などの影響もあるが、若者が安定した仕事に就けないことが少子化の主因である。良質な雇用の創出には企業の投資が欠かせないが、大企業は海外での投資を拡大している。海外の方が国内よりも高い成長が見込めるほか、国内の規制の多さが投資の阻害要因になっているため、規制緩和が課題となる。
雇用で注目されるのは、近年第2のベンチャーブームが生じ、雇用者数でベンチャー企業が4大財閥を上回ったことである。スタートアップに対する支援拡充に加え、第4次産業革命が進展するなかで、新たなビジネスチャンスが生まれていることが背景にある。この流れを広げることが重要である。