「懐石料理」の言葉の由来は禅にある
みなさんの中では、何となくの世間のイメージからなのでしょうか、日本料理=懐石料理と思っている方も多いのではないでしょうか。
「懐石料理」というのはそもそも「懐石」という禅から来た言葉です。その昔、空腹や寒さをしのぐため、僧侶は懐に温めた石を入れて暖を取っていました。転じてその石のように、茶事の時の空腹をしのぐための軽い料理、お茶を楽しむために先に客人に出す料理のことを懐石料理と呼ぶようになったというわけです。
一方で「会席料理」というものもあります。
こちらは、人と人が「会って」楽しく食事をする料理のことです。音が同じ「かいせき」なので、双方を区別するために、懐石料理を茶懐石と言ったりもします。
では、私がやっているものは何か、というと、間違いなく「会」う「席」の会席料理です。そもそも会席料理は、先の茶懐石をもう少しお酒や何か、集まりを主体にして砕いた形にしたものとも言えます。
現代の日本人が茶懐石を1年の中でどれだけ味わう機会があるかというと、ほとんどありません。茶事を前提とした本格的な茶懐石になると、一生のうちで経験する人は、さらに少なくなります。
ですから逆にいうと、何かそれに近いもの、もしくはそういったものでも、もう少しだけリラックスできるものはないのかといって、商業的にできたのが会席料理です。
和食・日本料理・懐石料理・会席料理の分類法
私の店のようにカウンターや個室がある店もこのスタイルだと思います。ただ私のやっていることは茶懐石とまではいきませんが、精神的には懐石をやっているつもりでいます。客人を「もてなす」という意味では同じだからです。
ただ懐石料理では、最初に少しの汁と飯が出てくるので、そこはお酒を楽しむのが目的だったりする会席料理とは大きく違います。
また、「会席」というと100人、200人規模のものまでを会席料理と呼ぶこともあります。
個人的な意見を言えば、日本料理を分類する際に、
1 正式なお茶事で出される、しきたりの多い料理を茶懐石と呼び
2 私の店のようなこぢんまりとした小規模なお店で、お酒にあわせて一品ずつ順番に出される日本料理を懐石料理と呼び
3 100人、200人規模で、宴会を目的とした日本料理も会席料理と呼ぶことがあり
4 一般的な家庭でいただくお総菜や和定食のような身近なものを和食と呼ぶ
という風に4つに区別できれば一番よかったのではないかなと思っています。
この分け方なら、ややこしい疑問も解決され、日本人でいながら日本料理と和食の区別が説明できない、といったこともなくなったのではないでしょうか。
日本料理も和食ですし、懐石料理も和食であることは間違いないのです。メディアをはじめ、日本人は使い分けの線引きができていない。定義が曖昧だからややこしくなっているのではないでしょうか。
私も取材などを受けた際やお客様から「日本料理と和食は何が違うのでしょうか?」といったような質問を受けることも多いです。
でも、ある意味、大きくいうと、一緒だということは間違いないと思います。