年末調整ではできない「医療費控除」

年末調整では申請できない所得控除のひとつに、医療費控除があります。自分や家族の医療費を支払った場合に、確定申告をすることで所得控除が受けられます。

医療費控除の金額の計算式は、「(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補塡ほてんされる金額)-10万円(※)」(上限200万円)です。

※所得が200万円未満の人は5%

たとえば、医療費の合計額が50万円、保険金などで補塡される金額20万円、所得税率10%の人が医療費控除を行うと、(50万円-20万円)-10万円=20万円ですから、医療費控除によって所得が20万円減ります。所得税はその10%にあたる2万円が還付されます。そのうえ、住民税(税率10%)も2万円安くなります。

写真=iStock.com/laymul
※写真はイメージです

医療費の対象となるものは、治療に関係のあるものと覚えておきましょう。

(例)
・医療機関で支払った自己負担分の医療費
・薬局で支払った薬代(医師の処方箋だけでなく市販薬も対象)
・通院に要した交通費(電車やバス。タクシーはやむを得ない場合のみ。ガソリン代は不可)
・治療のための歯の矯正
・マッサージ〔あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)〕 など

一方、病気の予防、健康維持、美容や疲労回復のための費用は対象外となります。

(例)
・健康診断
・人間ドック
・予防接種
・美容のための歯の矯正
・疲労回復のためのマッサージ
・栄養ドリンクやサプリメント など

市販の医薬品で所得控除できることも

また、医療費控除を申請するほど医療費がかかっていない場合には、医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制を利用することで税金を減らせます。所定の健康診断などを受けている方が、薬局などで対象の医薬品(スイッチOTC医薬品)を年間1万2000円超購入した場合に受けられる所得控除です。

なお、以前は健康診断を受けたことを示す証明書を確定申告の際に提出する必要がありましたが、2021年分の確定申告からは提出不要になっています。その代わり、対象医薬品を購入した際の領収書と同様、自宅で5年間保管する必要があります。

セルフメディケーション税制では、「対象の医薬品の購入費用-保険金などで補塡される金額-1万2000円」(上限8万8000円)が控除できます。年間のスイッチOTC医薬品の金額が10万円だった場合、10万円-1万2000円=8万8000円所得控除できます。所得税・住民税の税率がどちらも10%ならば、所得税が8800円還付され、住民税が8800円安くなるので、合わせて1万7600円税金を減らすことができます。

医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか片方しか使えません。しかし、同一生計の家族の分もまとめて利用できます。ですから、家族全員分の費用を集計したうえで、より税金が取り戻せる方を選択し、家族の中で一番所得が多い人が申告するといいでしょう。