「肩の力を抜け」では、わからない
たとえば、「肩の力を抜け」というアドバイスがある。
高校野球などで監督がしきりに肩を上下させるジェスチャーをする姿が見受けられる。たしかに大事なことで、私も二軍のころによくいわれたものだ。
ところが私の場合、そういわれるとかえって力が入ってしまうことが多かった。肩の力を抜こうと意識すればするほど硬くなってしまうのだ。
そもそも肩の力をほんとうに抜いてしまえば、バットなど振ることができなくなるではないか。「肩の力を抜け」とはつまり、「リラックスせよ」という意味なのである。
選手がコツをつかんだ「ひざの力を抜け」
身体全体を楽にするにはどうしたらいいか。考えて思いあたったのが、肩ではなく「ひざの力を抜く」ことだった。
実際にそうしてみると身体全体の力がうまい具合に抜け、リラックスしてバットをかまえられた。だから私は、緊張している選手に「肩の力を抜け」といったことはない。「まずはひざの力を抜け。ひざを楽にして柔らかく使うんだ」と教えると、選手も「なるほど」という顔をしたものだ。
同じ内容を伝えるのであっても、目のつけどころを変え、より具体的に実践に即した表現をすれば、聞くほうはイメージしやすくなり、より吸収しやすくなる。そして課題を解消しやすくなるのである。