あまりに静かで礼儀正しく座っているから…

でも日本は規制されている社会だから、しっかりした警備をした。そんなところが、ぼくらにはちょっと変わってると感じたね。いつもキャーキャーいうファンの前で演奏することに慣れているから、騒がない客のいる国で演奏すると、なんていうのかな、うまく演奏できてなかったのかなって思ったんだよ。

野地秩嘉『ビートルズを呼んだ男』(小学館文庫)

(観客のリアクションなどが)普段と違っていたことは、ぼくらを少し緊張させた。イギリスやアメリカで演奏したときは反響が予想できたからリラックスしていたけれど、日本に行ったら警官は入ってくる、観客は礼儀正しく座っている。混乱した。あまり静かだから「ぼくらのこと気に入らないの?」って。嫌われたのかと思ったよ。まあまあの出来だなあとは思ったんだけど、最高ではなかったのかなって。

でも、そんなことはない。今振り返るとよかったんだ。当時は、プロとして自分たちのできる限りのベストなコンサートをしなかったのかも、もっとうまく演奏できたかもしれないって、そう思ったんだ。警察が最前列にいたし、その他いろいろなことが原因で、演奏に集中できなかったのかもと思った。

でも、ぼくらは当時、世界でいちばんのライブバンドだったからね。だから、あのコンサートはベストだった。

——客のひとりであなたが歌った「Yesterday」を今でも忘れないという人がいます。

【ポール】それはよかった。やっぱりいいコンサートだったんだね。コンサートは大盛況だった。すごく良い出来栄えだった。(後編につづく)

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