新築物件には「新築プレミアム」がついている
私からのアドバイスとしては、まず生活費を見直し、3年くらいの計画で差金を貯めていくことを提案しました。差金を分割返済できるような仕組みがあればいいのですが、現状は認められていないので、今すぐ動くことはやはり難しそうです。実家の両親も蓄えが少なく、援助は難しいという話でした。
ただ、お金を貯めているその間にも、家の売価は変動します。以前(「自分は月5万アパート、元妻は6000万円マンション」ペアローン離婚の恐ろしい格差)もお伝えしたとおり新築物件の場合、物件を完成させるまでにかかった広告・宣伝費などの費用が、「新築プレミアム」価格として売値にプラスされています。住んだ瞬間に「新築物件」は「中古物件」となり、1割ほど値段が下がります。安田さん夫妻が4000万円で買った物件でいえば、住んだ次の日には3600万円になる計算です。
そんな新築プレミアムも考慮すれば、すでに5年間暮らしていたことや、都心に出るには乗り継ぎの必要なローカル線の駅が最寄りだったことなどから、3200万円という査定になったのだと思います。この査定は決して大暴落でなく、私は妥当な金額だと感じました。
また、生活費の見直しの点では、妻いくみさんのレジャー費を抑えてもらうようにお願いしました。真面目で心配性な隆夫さんの一方、いくみさんはお金に無頓着で、独身時代の貯金もほぼゼロ、今もフラメンコなどの習い事を掛け持ちしている状況。このような事態がなければ問題ない範囲でしたが、ご両親の状況も考慮し、厳しめの節約をお願いしているところです。
もし頭金400万円を入れていれば、すぐに売却できた
では、安田さん夫妻の「落とし穴」はどこにあったのでしょう。それは「頭金ゼロ」です。
たとえばもし安田さんが1割にあたる400万円の頭金を入れていたら、5年後のローンの残債は3190万円でした。さらに2割では2800万円ですから、ほんの少しでも頭金を入れていたら、オーバーローンにならず、家を売却できていたのです。
超低金利時代の今、「頭金なしでもいけますよっ!」などという威勢のいい不動産業者の声を聞いたことがあるかもしれません。しかし私はマイホーム購入を前にしているお客さまには常に、「最低でも売値の1割を頭金として入れてください」とお伝えしています。いくら優遇された金利であろうとも、です。
「ローンを組んだとしても、賃貸のときに払っていた家賃と大差ありません」というのもよく聞きますね。そのとき確認していただきたいのは、不動産業者の返済シミュレーションが、「税込年収」からはじき出されたものかどうか、ということです。