同じ世界を生きながら、違う次元に存在する人々

近代の科学は、自分の心をとりまく世界を「たましい」のない、単なるモノだと考えている。モノは操作することができる。けれど、魔法の世界では、この世界は生命を持っていて、この世界を構成するさまざまなものが目には見えない、精妙なネットワークを形成していると考えている。

だから、人は心を込めて自分自身に、相手に、そして世界に「語りかけ」て関わることができると考える。その言葉が届けばあなたの願いは叶うだろうけれど、それは対象を支配することではない。

これは、あなたが誰かを愛することと、その相手を支配し束縛することが違うのと同じことだ。魔法が効くことがあったり、そうでなかったりするのは、この点と関わっている。

目に見えない世界を愛おしく感じる力

ある英国の研究者はこういう魔法の捉え方を、Magicというよりは「エンチャントメントEnchantment」と呼ぶほうがいいのではないかと提唱している。

マジックというとついつい、思うとおりの結果を「引き寄せる」ための方法だと勘違いしがちだ。「こうすれば100パーセント成功する」「必ず愛される」とうたうライフハックは魅力的だけれど、よくよく考えてみれば、それは「支配者」の姿勢ではないか。

けれど、「エンチャントメント」と言うと、この世界の不思議さや思いがけなさに心を動かされ、魅了されるというニュアンスが出てくる。時に言うことを聞いてくれないこの世界を憎らしくも愛おしく感じながら、この世界の偶然が差し出してくれるチャンスや縁に心を動かす。

そんなスタンスこそ、本当の意味でマジカルな生活ではないだろうか。