プロ演奏家になる夢をかなえるために
「進学が決まった2月に、東京での学生生活は、もうそうなるだろうなってわかっていました。貯金はあったけど、普通のアルバイトで学費と生活費を稼ぐのは不可能なので。入学式の前から高収入系の仕事をいろいろ調べて、風俗にも詳しくなりました。キャバクラは学校との両立は難しくて、デリヘルでは必要な額を稼げないだろうと判断したので、最初から吉原に行きました。
70分3万円の店で、バックは1本1万6000円くらい。週4日出勤して、一日2本つけば必要なお金は稼げる計算でした」
亜弓さんはシングル家庭育ちだった。どうしてもプロ演奏家になりたい夢があり、高卒で働いて300万円を貯めてから音大に進学することにした。高校を卒業して非正規OLになった。収入は月19万円くらい。毎月10万円を貯めることを目標にして300万円を貯めるのに3年かかった。
「借金するんじゃなくて、稼げるときに稼ぐ」
上京前は2年間付き合った恋人がいた。2歳年上の社会人でプロポーズもされたが、ひとりで上京して大学生になった。
「母親が大学の費用を払うのは絶対に不可能です。本当にギリギリの生活なので東京までの交通費もだせないと思います。大学に行くって決めたのは自分だから、上京してすぐに吉原のソープ嬢になって、AV女優になったのは1年生の冬です。ソープ嬢になってからずっと知らない男性とエッチばかりですけど、覚悟していたし、あまりなんとも思いませんでした」
進学費用を貯金するために3年間非正規OLとして働き、大学4年間自らを知らない男性に捧げ続けて、7年もの月日をかけてやっと大卒資格を手にすることになる。親からの援助や協力がない地方出身の学生は、そこまでしないと学生生活を送ることができない現実があるのだ。
住んでいるのは家賃8万円の部屋、オートロックで2階以上だとどうしてもそれくらいになる。学費は年間150万円で、合わせるとこれだけで年間250万円がかかる。それに食費、光熱費といった生活費も合わせると、月30万円~40万円は必要になる。その金額を学生をしながらアルバイトで稼ぐのは不可能なので、カラダを売るという選択肢しかなくなる。
「奨学金は返済義務があるし、音楽は稼げる仕事じゃないし、借金するんじゃなくて稼げるときに稼ぐという考えです。だから奨学金は借りてません。東京にくる前から、頭のなかはお金ばかりでした。しばらくしてソープランドで働いているだけでは不安になってきて、他にもお金になることないかなって調べたんです。それでAV女優もやることにしました。デジタルタトゥーは残るけど、AV女優って肩書きがついたほうがその先も稼げるかなって思ったから」