専門家ですら結婚を押し付けてくる

彼女がこのような発言によって傷付けられたのは、これが初めてのことではない。就職と同時に実家から逃げて一人暮らしを始めた頃、フラッシュバックによって気分が落ち込みがちになったときに通った精神科でも、似たようなことが起きた。50代半ばの男性カウンセラーから、突然脈絡もなく「もっと明るく振る舞えば彼氏ができるよ」と言われ、母親の再婚がきっかけで虐待を受けた過去のことも知っているはずなのに、まるで「結婚をすれば全て解決する」かのようなアドバイスまでされてしまったという。

彼女は「当時、結婚は考えてませんでしたけど彼氏いたんですよ。なぜか彼氏がいないと決めつけられちゃったみたいで、二重に失礼ですよね」と苦笑したあと、「専門家ですらそんな認識なのかって思うと、もうカウンセリングにお金を払って通うのも嫌になって」と小さくこぼした。

「結婚は人生におけるゴール」だという刷り込み

私自身、世間一般に「ゴールイン」という言葉があるように、結婚がまるで人生のゴールのように扱われていたり、あるいはチェックポイントかのように考えられていたりすることについて、疑問に思うことが多い。

「結婚できなければ幸せになれない」という刷り込みは私たちが生きている社会の非常に根深いところで行われていて、「結婚」のあとには「出産」、そのあとには「マイホーム購入」が、誰しも通らねばならない通過地点として考えられている文化圏も存在する。しかしながらそうした価値観は現代の日本にはそぐわないものであり、今に至っては、家父長制の中で女性が家に閉じ込められていた時代の負の遺産そのものだと思っている。

もちろん、結婚する人や出産、マイホームを購入する人のことを否定しているわけではない。能動的に自分に合ったライフスタイルを選択したりタイミングを考えたりすることは素晴らしいことだ。問題なのは、そうではない人たちのこともひとくくりにして「結婚こそが幸せだ」とか、独身の人を「結婚できない」と言い表すなど、彼ら彼女らの「独身で生きていく方が自分に合っているから結婚しない」という選択を尊重せず、存在を無視し、価値観を押し付けてしまうことだ。

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