上司の目を盗みながら株式投資をする人も

多額の資金を必要とする不動産投資と異なり、株式投資は比較的少額でできるのが魅力で、200万から300万ウォン(20万円弱から30万円弱)の金額で始める人が多い。

若者の間の株式投資熱は20年に入ってさまざまな形で話題になった。証券会社における新規口座開設では、20代と30代による開設が半分以上を占めるようになった。書店には株式投資に関する書籍が平積みにされ、大学やインターネットでの投資サークルへの参加者が増えた。出社後も、上司の目を盗みながらネットで株式投資する人も出てきた。彼らの多くは第4次産業革命や再生エネルギー、バイオ関連の米国銘柄に関心をもち、そのなかでもテスラやアップル、ファイザーなどが人気の対象である。

では、なぜこれほどまでに若者による株式投資が増えたのだろうか。ネット証券の増加や超低金利、コロナ禍での在宅時間の増加、20年初からの株高などが思い浮かぶが、これは日本でも同じである。韓国にはこれら以外に固有の事情がある。若者の就職難と前述した住宅価格の高騰である。

会社員にも公務員にもなれず5人に1人が失業

韓国では2000年代に入って以降、若者の就職難や格差の拡大、少子化の加速などが社会問題になった。若者の就職難は97年の通貨危機後、大企業が大学新卒者の採用数を減らしたことが影響している。この背景には、コアとなる分野では即戦力になる専門人材の中途採用(国籍を問わず)を増やす一方、それ以外の分野では非正規職を多く採用するようになったこと、グローバル化を進めて国内よりも海外での事業を拡大したことにある。

また、大学進学率の上昇に伴い大学生が増加し、大企業志向が強まったことも影響している。日本と異なり、韓国では大企業に続く中堅・中小企業の層が薄い。学生たちは給与・福利厚生面で大企業に見劣りし、社会的評価も低い中堅・中小企業への就職を忌避する傾向が強い。

大企業への就職の門が狭くなったため、公務員試験に殺到する。競争率は極めて高く、こちらも狭き門である。この結果、就職・試験浪人として留年して予備校に通ったり、大学院に進学する者が増えた。アルバイトをして生活する人も多い。

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20~29歳の失業率は2000年の7.5%から20年に9.0%へ上昇した。これはあくまでも統計上の数字で、就職活動をしない非労働力を勘案すると、実質は20%程度とみられる。若者の就職難は非婚化や少子化の要因になっている。合計特殊出生率は2000年に1.47であったが、20年には過去最低の0.84になった。少子化の加速により、労働人口(15歳から64歳までの人口)が20年に減少に転じるとともに、急ピッチで高齢化が進んでいる。