取引先の小売店に「裏切られた」経験

店舗数の拡大とともに、私どもの購買力も大きくなってきました。当然、それだけ取引先1社当たりとの取引額も多くなります。当社との取引がなくなることで、相手方の致命傷になるのは好ましくありません。そこで「他社さんは、これだけの卸値を提示しています。もう少し検討願えませんか……」と打診するようにしています。

なかには、そうしたフォローにもかかわらず、取引が解消になったケースもあります。しかし、その後の経営努力で、先の判断基準に合致して、取引が再開したことも数えきれないくらいあるのです。

実は当社も、創業から数年間は食品卸を営んでいました。あるとき、取引先の小売店から「一般のスーパーでは198円で売られている削り節を100円にしたい」といわれ、それに応えようとメーカーと必死に工夫をしました。

そして、ようやく希望の卸値を実現させ、「さぞかし飛ぶように売れるだろう」と期待していたのに、追加の注文が全くない。不審に思い店頭を覗いてみると、ほんの少し値下げしただけの178円で販売されていました。裏切られた気がしました。

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対前年比売り上げで苦戦続く卸売業に取引見直しの影響も

いま当社では、徹底的にコストを抑えて、お客様が驚くような値段を目指した「D-プライス」というプライベートブランド商品に力を入れています。すでに全売上高の20%を占めています。

1個68円というカップラーメンは、大手食品メーカーとの共同開発でした。1回の発注を1万ケース(12万個)に引き上げる一方、焼き豚をカマボコに替えるなどのアイデアで製造コストを下げました。「この値段なら」という販売価格を最初に決め、メーカーの担当者と一緒になって頭を絞って日の目を見た商品なのです。

私たちは“流通革命”を通して社会を豊かにしていきたいと考えています。そのためにもお互いに切磋琢磨できる取引先を大切にしたい。その思いが相手側にも通じ、納得してもらえているものと信じています。

※すべて雑誌掲載当時

(岡村繁雄=構成 熊谷武二=撮影)