1971年に中華人民共和国(共産党)が国連に加盟し安全保障理事会の常任理事国メンバーになると、それまで常任理事国だった中華民国(国民党)は国連から追放された。ベトナム戦争終結に中国の協力が必要になったため、当時のニクソン米大統領とキッシンジャー大統領補佐官が画策したのだ。これは翌年のニクソン訪中、さらに79年の米中国交樹立につながっていく。

このニクソン・キッシンジャー外交は今でも高く評価されているようだが、私に言わせればとんでもない愚行だった。2人ともアジアの歴史に疎かったのだ。

中国は第2次世界大戦の戦勝国だったが、当時の連合国側で中国代表とされていたのは国民党政権(中華民国)で、事実カイロ会談に中国代表として参加していたのは、毛沢東ではなく蒋介石だった。終戦後、中国では国民党と共産党との内戦が再開。49年に毛沢東が北京で中華人民共和国の建国を宣言すると、国民党は台湾に逃れて政権を維持、現在も中華民国こそが中国の正統政権と主張している。

アメリカがどうしても中華人民共和国を国連に引き入れたかったのであれば、その前に共産党政権と国民党政権の間に立って和平協定を締結させ、ひとつの中国にすべきだったのである。それで2度と国共で戦闘をしないよう、国共内戦の最後の戦場となった福建省の厦門アモイあるいは金門島か馬祖島に議会を置く。ニクソンとキッシンジャーがそのような提案をすれば、鄧小平ならきっと受け入れたはずだ。

結局、敗戦国で立場の弱い日本もアメリカに従わないわけにはいかず、田中角栄が周恩来と握手して日中国交正常化した。そのせいでそれまで仲の良かった台湾(中華民国)には、大使も送れなくなってしまったのである。

アメリカはその後も中華人民共和国をWTOに加盟させたり、大量の学生を自国に留学させ成長と発展のノウハウを教えて送り返したりと、中国の発展に手を差し伸べ続けた。同時にアップルなどのアメリカ企業の生産工場としても利用していった。その結果、中国は成長する経済力を背景に軍事力も高め、気がつけばアメリカの覇権を脅かすほどになっていた。まさに現在の中国の脅威の原因は、中華民国を国連から追い出し、中華人民共和国を国連安保理の常任理事国にしたニクソン・キッシンジャー外交であり、アメリカ自身なのだ。

台湾有事では日本も戦場に

さて、今後6年以内にも起こりうると言われる米中間で台湾有事が勃発したら、日本も無傷ではいられない。安倍前政権が集団的自衛権を認める安保法を策定したから、アメリカが有事の際、日本も参戦できるようになった。日本は戦争に関わりたくないから基地を使わないでくれとは言えないのである。まず、沖縄の嘉手納や普天間は間違いなく狙われる。アメリカ第7艦隊が配備されている横須賀、それから横田も中国の攻撃対象となるだろう。佐世保や岩国もやられるかもしれない。台湾問題でアメリカと共同歩調をとると言ったら、そこまで覚悟しなければならないのだ。