「あとでやる」では答えになっていない

これが、仕事の現場でのやりとりだったら、どうだろうか。自分が仕事を頼む側だったとしよう。

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「得意先に電話をかけてアポイントメントをとっておいてほしい」と頼んだら、後輩が「あとでやります」と答えたとする。頼んだ側はどう思うだろうか? 「すぐにやってくれそうだ」と感じるだろうか? むしろ、「そのあとっていうの、いつだよ」とは思わないだろうか?

それが、スマホを見ながら、顔も上げずに「ちょっと待ってください」と言われた日には、「お前やる気あるの?」とさえ思うのではないか。もしかしたら、「じゃあ、いい。こっちでやるから」と引き取ってしまった方が早いかもしれない、という思いが頭をかすめることもあるだろう。

いずれにせよ、「あとで」という言葉には、「すぐにやってくれるだろう」「ちゃんとやってくれそうだ」とは思えない、「やります」を先送りしているだけという印象が拭えない。ましてや、「あとで」と言いながら、目の前で後輩が延々とスマホをいじり続けたら……「いつになったらやるんだよ」とイライラする自分の姿も、想像に難くない。

では、一体後輩がどう答えれば、「やってくれそうだ」と思えるだろう。

「電話一本かけたらやります」「○○が終わってからでもいいですか?」「今から出なくちゃいけないので、明日でも間に合いますか?」といった返事だったらどうだろう。相手の状況と、明確なお尻が見える返答があれば、頼んだ側は納得する。たとえ、それが「今すぐやります」ではなく、もしかしたら、今日はできない、という返事であったとしても。

「いつやるのか」を具体的に伝えるべき

夫婦の会話でも、状況は同じだ。頼んだ側の妻は、夫のいつだかはっきりしない「あとでやる」に、「私がやった方が早いかもしれない」という思いを抱く。

そしてやる気のなさを感じ取る。だとすれば、妻への答えも先送り感満載の「あとで」や「ちょっと待って」を封印して、なるべく具体的な方がよい。

「このニュースが終わったらやるよ」「着替えたらやるから、ちょっと待って」などと、具体的な時間の枠を提示するのだ。

そうすることで、妻としては、自分でやってしまった方が早いのか、あてにしてもよいのかの判断がつく。実は、これが非常に重要なのだ。彼女は、他の家事との兼ね合いで、今これを夫がやってくれなければ、自分でやってしまった方が早い、と考えている可能性が高い。

・やってくれればとてもありがたい。
・でもやってくれないなら、私がやる。
・一番迷惑なのは、だらだら先延ばしにされて、結局私があとでやらなければならなくなること。

彼女の頭の中ではこの三択がぐるぐる回っている。

「この番組が終わったらやるよ」と答えて、番組が終わるまで一時間も待てないと判断すれば、「じゃあ、私がやるよ」と彼女は言うかもしれない。そう答えるのは、頼んだことが喫緊の課題だからだ。

そこで、「終わったらやるって言っているじゃないか」と言っても話にならない。それは「午前中に電話をしておきたい」と思って頼んだのに、「昼飯後にかけますね」と後輩に返されて、「じゃあ、自分でかけるわ」というのと同じだ。

そのときに、「昼飯後にかけるって言ってるじゃないですか」と声を荒げる後輩は……少なくとも電話をかけてほしいと依頼した先輩から見ると、アテにできない後輩だろう。