資格という「手段」に依存し過ぎない

資格や学位は、あくまで仕事をするための手段であり、道具です。道具は、それを使ってどんな成果を出すかが重要で、それ自体が評価の対象にはなるものではありません。野球選手で例えると、どれだけ名人が作ったバットを持っていても、肝心の打撃成績がついてこないと年俸が上がらないのと同じです。

同じように、採用側にとっても、資格を持っていることと、それで何ができるかはまったくの別物。選考で確認したいのは「何ができるか」のほうで、資格も過去の実績も、それを確認するための参考資料でしかありません。

書類選考や面接の際、転職者はまず、自分の過去の実績や、持っている資格などを伝えると思います。しかし、それらは決して主役ではないということを忘れないでください。

いくら熱心にアピールしても、それが入社後の貢献に直結すると思われない限り、採用側には「そこはあまり関係ないんだけどな……」と思われてしまいかねません。「過去の実績や資格は、その人の可能性を探るための参考資料」。選考には、それを理解した上で臨んでほしいと思います。

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転職は“買い手”がいてこそ成り立つ

実績や資格は自己紹介の一環として淡々と伝え、入社後にそれを活用して、どんな貢献をしていきたいのかを具体的にアピールすることをおすすめします。

MBAを持っている場合も、資格そのものをアピールするのではなく、「私はこういうことを目指してこういう勉強をしてきました。それを貴社でこんな風に活用して成果を生み出していきたいです」と伝える姿勢が大事。「自分は努力を怠らない人間で、成果を出すために必要な道具も備えているから貢献できる」と伝えるのです。

今回ご相談いただいた方は、身近にMBA取得で高年収のポジションに転職できた方がおられたのかもしれません。そうしたロールモデルから刺激をもらって、自分もキャリアアップを目指したいと考えたのだとしたら、それ自体はとてもすばらしいことだと思います。

ただ、そのロールモデルになった方が満足度の高い転職ができた理由を、もう少し深掘りしてみてもいいのではないでしょうか?

転職を希望する人は、ともすると「自分をどう売るか」にばかり目が向いてしまいがちですが、実際は「買う側」があってこそ成り立つもの。買い手の望みを知らないまま自分の理想だけ追い求めても、それではただの夢で終わってしまいます。