血縁というだけで全ての負担を負わせられる

家族を取り巻く環境を巡っては、少しずつではあるが、世間の認知も変わりつつある。最近では、週刊誌やマスメディアでも相次いで「家族じまい」「親を捨てたい人」「毒親」などの特集が組まれるなど、親と子を巡る世間のまなざしも変化の兆しがある。1997年に『日本一醜い親への手紙』という本が出版されベストセラーとなったが、当時まだ未成年だった私は、この本だけを唯一の心の支えに生きるしかなかった。毒親問題とは、まさに私にとって自分事である。

菅野久美子『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)

国立青少年教育振興機構が2014年9~11月、日米中韓各国の生徒計7761人に対して行った調査によると、「親が高齢となり、世話をすることになった場合どうするか」との質問に「自分でしたい」と答えたのは日本は37.9%で4カ国中最低だった。

この数字は、日本社会の過酷な現実を雄弁に物語っている。

私が長年取材している孤独死においても、疎遠だった親が孤独死し、その高額な特殊清掃費用や葬儀費用を子供が泣く泣く負担せざるをえないというケースに多々遭遇している。以前に行き場のない漂流遺骨の取材をしたことがあるが、その中には長年疎遠だった親の遺骨を押しつけられ、当惑している子供の声も多く聞いた。

血縁というだけで、全ての負担を負わせられる。そして、その胸の内を誰も理解してくれない。

そこには家族が形骸化した現代においても、旧態依然の血縁関係が非常に重視される日本のいびつな社会構造がある。遠藤さんらの草の根的な活動の輪が広がることによって、私のような親子関係に苦しむ人が少しでも減ればと感じてやまない。

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