ケアマネジャーには「お母さん、娘さんが自慢なんですよ」と言われ…
「こんな犬や猫も着ない服なんか送ってきて。自分のことを乞食かと思うこともあります」
母親が毎月送ってくる手紙には、毎回送ってほしいものが書かれているが、母親が希望するパジャマやインナーなどを送っても、感謝の言葉一つなく、前述の呪詛のような言葉を手紙で投げつけてくる。
さらに、母親は施設でトラブルを起こし、施設を転々として、その度に新しい施設探しに追われた。Aさんは看護師として介護施設に勤めているので、高齢者の対応は慣れている。それでも母親の存在は重くのしかかってきた。
担当のケアマネジャーにこれまでの事情を相談しても「お母さん、娘さんが自慢なんですよ」とにべもなく返される。一人っ子であるAさんの苦しみに寄り添ってくれる人はいない。それがつらい。孤立したAさんは、介護施設から連絡があると、一日気分が落ち込み、動悸がして、仕事が手につかないこともあった。
そんな中、コロナ禍となり介護施設からの呼び出しもなくなり、Aさんはつかの間の安息を得たという。Aさんの母親は昨年末に肺炎で亡くなったが、心の底からホッとしていると胸の内を語ってくれた。
「私は看護師ということもあり、介護施設とのやり取りや、母が亡くなった後の葬儀の手配など、何とか自力でできました。でも普通の人なら、心が折れていたと思う。もし第三者の方がサポートしてくださるなら、それはとても助かる。これからの時代、私のように親と関わりたくないという人は増えてくると思う。だけど、現実問題として親子の縁はなかなか切れない。でも、やりたくないことは親子でもやらないほうがいい」
Aさんの言葉が私の胸に響く。遠方でも、物理的に距離が離れていても、親との関係の苦しさは変わらない。
介護施設に入居したときの第一連絡先を引き受けてくれる
家族関係の取材を続ける中で、介護から納骨までを一手に引き受ける「一般社団法人LMN」代表の遠藤英樹さんに出会った。
LMNは一種の「家族代行業」として、親の最後の「後始末」を手掛けている数少ない民間の終活団体である。LMNのサービスをわかりやすく言い換えれば、子供に代わって親の最期までを請け負うエンディング版の家族代行業だ。
ホームページによると、料金は、例えば82歳の親の介護施設入居から葬儀までサポートしてもらう場合97万円。もちろん、介護施設の月々の費用などは別になる。
サービスの一番のポイントは、LMNが介護施設の入所者の第一連絡人になっているという点である。身元保証人になるのは家族だが、本人の最期はLMNに任せることができる。つまり本人と家族との関わりを絶つことができるというわけだ。