「誰でも達成できそうな数字」は目標になりえるのか

サンコーは風通しのよさとITの活用によって、集団の強みを最大限に引き出している会社なのだ。それが玉置の言う「居心地のよさ」の内実だろうか。

もうひとつ、謎の言葉があった。それは「達成できそうな数字」である。達成できそうな数字では、普通、目標にならない気がするのだが……。

サンコーインダストリーの本社社屋。(写真提供=サンコーインダストリー)

「多くの企業が設定している目標って、たいていの場合、目標じゃなくて賞罰なんですよ。だから無茶な目標を立てることが正義とされていて、無茶な目標だからこそ、達成できると褒めてもらえるんです。でも、これってすごくおかしな話で、1年かけて3キロダイエットすれば適性体重になる人が、今年はちょっとキツめに5キロ減を目標にしたろって、普通、考えないでしょう」

たしかにそう言われればそうだが、目標を高く設定することによって、潜在的な能力が引き出されるのも事実ではないだろうか。

「急激に業績を伸ばそうとするから、目標を賞罰にすり替えて、達成できない個人を罰し、個人の責任を追及するようになるんです。でも、少しずつ成長していこうと思ったら、賞罰にする必要なんてないんです。

サンコーは誰でも達成できる、『行ける目標』しか立てません。採用担当の社員がいいこと言ってました。『うちには目標はあるけれど、ノルマはない』って。ノルマなんかあったら、社内がピリピリして嫌ややないですか(笑)」

90歳の超高齢者は戦力になっているのか

なるほどと感心しつつ、いくらITを駆使して総合力で勝負しているからハイスペックな人材は求めていないのだと説明されても、さすがに90歳の超高齢者が本当に戦力になっているのかどうか、確信が持てない。

「うーん、僕はギネスに載るって言われても、ああそうなんと、特別なことだとは思いませんでしたけどね。たしかに、高齢になればそれまでやっていた仕事のパフォーマンスは下がるかもしれません。でもそれは、同じ仕事を同じパフォーマンスでさそうと思うから『アカンなぁ』となるわけで、仕事の配分をきちっと見直して最適化してやれば、また同じような結果が出せるんです。それをやるのが、経営者の仕事ではないでしょうか」