手練れの長老たちも手玉に取られる
小池氏は2017年に「希望の党」を率いて衆議院選挙に参戦した際、「(考えが違う者は)排除します」と高らかに宣言し、自身の印象を一変させてしまった。今回の騒動でも、同じような大逆風を吹かせるかと思ったが、吹かなかった。周到である。
この衆院選で、それまで世間が彼女に抱いていた「慈母のごとき優しさと強さを持った小池さん」「石原慎太郎や森喜朗をはじめとした老害に虐げられる、いたいけな女性」という姿は覆り、「冷酷な女帝」のイメージに一気に変わってしまった。小池氏は国政選挙には気持ちが入らぬ様子で、選挙期間中はパリへトンズラ。結局、希望の党は惨敗した。この体験により、小池氏は「風を読む力」をさらに強化したのではなかろうか。
先ごろ、森喜朗・前東京五輪組織委員会会長の「女性の多い会議は話が長くなる」「わきまえる女」発言の波紋が広がるなか、小池氏は森氏、IOCのトーマス・バッハ会長、橋本聖子五輪担当相(当時)との4者会談への不参加を表明。「いまはポジティブな発信にならないと思う」が不参加の理由だった。
これも見事だった。“天敵”である森氏が世間の大逆風にさらされているなか、自分の支持を高めるためになにをすべきか、といえばコレしかない──という手を打ってみせたのだ。同様の例でいえば、2016年、安倍晋三氏の自民党総裁としての支持がゆるぎなく、自分は次の首相にはなれないと見るや、都知事選に打って出る──という動きも忘れられない。都知事選では、対立候補の応援演説に来た石原慎太郎氏の「大年増の厚化粧」発言を受けて「私は顔にアザがあるので」と明かし、一気に追い風を得るとともに、石原氏の「老害」認定を強化させた。
小池氏の作業着姿に感じる違和感
私のような編集者・PRプランナーという職業に従事してきた者からすれば、小池氏の「風を読む力」には感服せざるを得ない。
とはいえ、毎度違和感をおぼえるのは小池氏の作業着である。近ごろはメディアに映る際、服装はたいがい作業着姿だ。「あれは、服に気をつかわないで済むからでは? 忙しい女性にとってはとてもラクな選択」(30代女性)といった好意的な意見も耳にしたが、これまで散々「小池劇場」に魅了(翻弄!?)されてきた単純な私としては、「これも小池氏による“演出”ではないか」と邪推してしまうのである。
ちなみに大阪府の吉村洋文知事も作業着を着ているが、これは吉村氏がもともと「スーツがあまり好きではない」と伝えられていることに加えて、「EXPO2025」のロゴが入っているため宣伝目的だと容易に推測でき、あまり違和感はない。
なお、小池氏のテーマカラーは「緑」だが、奇しくも東京都の作業着も緑である。東京都のモニタリング会議では、緑の作業着を身に付けた人々がズラリと並び、その後の会見で小池氏はこの作業着を着る。前述した3月19日の定例会見でも、小池氏は作業着を着ていた。3月22日の「リバウンドさせない」と宣言した会見でも作業着姿だった。