重要なのは正しい知識に基づいて正しく怖がること

問題の変異ウイルスがイギリスで見つかったのは、昨年9月ごろだ。その後、南アフリカやブラジルでもそれぞれ変異したウイルスが確認された。WHOによると、イギリス由来の変異ウイルスはこれまでに約50カ国・地域で確認され、南アフリカ由来の変異ウイルスは約20カ国で見つかっている。

心配なのがワクチンの効き目だ。メッセンジャーRNAワクチン(遺伝子ワクチン)を開発したアメリカの大手製薬会社ファイザーは、ワクチンを接種した人の血液を使った実験でワクチンの有効性を確認している。しかし今後大きな変異が起きれば、ワクチンの有効性はなくなる。

私たちはこの変異ウイルスにどう対処すればいいのか。重要なのは正しい知識に基づいて正しく怖がることである。

そもそも変異とは、遺伝情報の一部が変化することだ。コロナウイルスに限らずどのウイルスも動物や人の宿主の細胞の中で増えるとき、自分の遺伝情報を複製する。しかし時々コピーミスを引き起こす。このコピーミスはコロナウイルスのようなRNAウイルスによく起きる。

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変異は起きて当然で、恐がったり、驚いたりする必要などまったくない。

ウイルス表面のスパイク(突起)が変化して感染力が増大した

ウイルスの遺伝情報は塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシンの4化学物質)の配列によって決まる。新型コロナウイルスにはこの塩基が3万個ある。それぞれのコロナウイルスが2週間に1カ所ずつの割合で異なる配列(変異)を作る。

世界中の新型コロナがこの割合で変異を繰り返し、人間界の環境にあったウイルスが生き残り、環境に適さないものは死滅していく。数限りない変異がこれまでに起きている。

塩基配列が特定の場所で異なると、感染力や病原性が変わることがある。イギリスや南アフリカ、ブラジルで見つかった変異株は、宿主の細胞に感染するときに使われるスパイク(突起)の先端部が変化して感染力が増大した可能性が指摘されている。

このスパイクはウイルス表面に無数に存在し、太陽のコロナのように見える。その先端部が鍵で、感染を受ける人の細胞が鍵穴に相当する。つまり問題の変異ウイルスはより鍵穴にあう鍵を持っているわけだ。