「監視と情報収集の態勢を強化せよ」と朝日社説
1月12日付の朝日新聞の社説も「変異ウイルス 流行を想定して備えよ」との見出しを付けて変異株の問題を取り上げる。
朝日社説は前半でこう指摘する。
「開発されたばかりのワクチンの有効性への影響や、病気を発症・悪化させる程度など、よくわかっていないことが多い。南アフリカの変異ウイルスに関しても、感染力が強まった恐れが指摘されているものの、詳細はまだ不明だ」
この朝日社説の指摘にあるように変異ウイルスについて不明な点は多い。そこを朝日社説は冷静に書いているが、これは社説として評価できる。
しかし、そんな朝日社説も筆が勢い付くのか、後半ではさらなる防疫の強化を求めている。
「2度目の緊急事態宣言が発出され、いま日本は『第3波』の流行のまっただ中にある。そんな状況で新たなウイルスが広がれば、事態をさらに深刻化させかねない。リアルタイムでの監視と情報収集の態勢を強化し、感染力や病原性など科学的な知見に基づいて、リスク評価を進めることが欠かせない」
いったい政府はどこまでの事態を想定しているのか
「監視と情報収集」「リスク評価」などどれも感染対策の基本的重要事項ではあるが、病院や保健所からの医療提供が逼迫すると、対策はさらに難しくなる。
朝日社説は最後にこう訴える。
「国内の医療の逼迫状況は限界に近いとの声が上がっている。感染の拡大防止とあわせ、最悪の事態も視野に、病床計画の見直しや人材確保策にいっそう力を入れる必要がある」
「最悪の事態も視野に」と書くが、元来、危機管理とは最悪の事態を想定して行うものである。野党から「対策が後手に回っている」と批判される菅義偉政権に必要なのは、この最悪の事態の想定だろう。どこまでの事態を想定しているのかが見えてこない。それがいたずらに不安を増大させているのではないだろうか。