コロナ後、住宅ローンの相談が最大77倍に増加

こうした状況を受け、住居を手放さざるを得なくなる世帯が増えてきているようなのだ。

「フラット35」などの住宅ローンを手がける独立行政法人・住宅金融支援機構の発表によると、3月以降ローン返済の一時猶予や見直しを求める相談が殺到しているという。新型コロナ感染拡大直後の2月には15件だった相談件数は、3月には214件、4月には1158件、5月878件と、最大77倍に増加している。

同機構の広報担当者によると、主な相談として以下のような相談内容が目立って増えているという。

「新型コロナウイルスの影響で今月分は入金できない。1カ月ほど待ってもらえるか」
「ボーナスが減りそうだ。ボーナス返済を取りやめることはできないのか」

また、同機構によるとこうした相談などに伴う「返済方法変更の承認件数」も、2月には0件だったものの、3月に2件、4月に198件、5月には1006件と激増しているのだ。

首都圏で住宅ローン融資を行う地方銀行の融資担当者が明かす。

「新型コロナを機に、うちでも確かに住宅ローンの滞納や返済方法についての相談は増え始めています。中でも目立つのが、ローンを組んで15~20年ほど経過していている、40代半ば以降~50代半ばくらいまでの共働き夫婦で、ペアローンを組んでいる家庭です」

ペアローンはギリギリの返済額でやりくりしている人が多い

「そもそもペアローンを組む人は、世帯収入からしてもギリギリの返済額でやりくりしている人が多い。しかも年齢的に、子供が高校生や大学生くらいになっている場合が多く、教育費がピークになっている。そこにコロナ禍が直撃してしまい、夫婦どちらかの収入が減ってたちどころにローンが払えなくなってしまった、というわけです」

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ここに出てくる「夫婦によるペアローン」とは、「夫婦連帯債務型住宅ローン」などと呼ばれる融資契約の一形態だ。

夫婦のうちどちらかが主債務者に、もう片方が連帯債務者となることで、夫婦連名による借り入れを行うものだ。これにより、例えば主債務者である夫の年収だけでは住宅ローンの希望条件に満たないような場合にも、妻が連帯債務者となって収入を合算することで、条件をクリアできるというメリットがある。

ところが、夫婦の収入を合算することでようやく審査が通ったような住宅ローンは、有事の際には破綻リスクも大きくなる。

会社員・武内浩平さん(仮名・44歳)も、9年前に都内の新築マンション購入にあたって組んだペアローンの返済がコロナ禍を機に厳しくなり、物件を売却して賃貸マンションに引っ越した。