連結売上高は4兆円前後で伸び悩んだまま
祖業にもメスを入れた。注力していた液化天然ガス(LNG)運搬船から事実上撤退した。商船を大幅に縮小し、安定需要のある艦船に集中する改革に踏み切った
ジェット旅客機事業はSJを成長事業と位置づけ、火力発電設備などで稼いだ資金をつぎ込んできた。しかし、事業化もままならぬまま、開発を凍結。連結売上高も4兆円前後で伸び悩んだままだ。そこに新型コロナウイルス禍による発電設備の工事遅れなども加わり、2020年4~9月期の連結最終損益は570億円の赤字だった。赤字幅は同期間として過去最大だ。
この状況下、三菱重工はどう立ち上がるのか。このほど発表した中期経営計画では2024年3月期に連結売上高4兆円(2021年3月期予想は3兆7000億円)、本業の儲けを示す事業利益は2800億円(同500億円)を目指すという。まずMSJ事業の費用削減で1200億円を捻出するほか、人員削減や拠点の統廃合なども進める。
成長戦略としては経営資源を次世代エネルギーなどの分野に振り向ける。脱炭素社会を見据え、水素を使って二酸化炭素(CO2)排出を抑えるガスタービンやCO2回収などの分野でグループの製品や技術を使う。再生可能エネルギー分野の製品や技術開発も強化し、2050年にカーボンニュートラル(炭素中立)達成を目指す。次世代エネルギーなど成長領域には1800億円を投じ、2031年3月期には1兆円規模の売上高を目指すという。
重電大手外国勢や日立は三菱重工の先を行く
しかし、世界の重電大手は火力発電設備などの構造改革で一歩先を行く。
独シーメンスもガス・電力部門を分社化し、9月に「シーメンス・エナジー」としてフランクフルト証券取引所に上場した。石炭火力は撤退を視野に縮小する方針で今後は風力発電機や新興国でのガス火力、メンテナンスなどのサービス事業を強化する。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)も石炭火力発電設備の新設からの撤退を決め、再生エネルギーの分野にシフトする。
同じ日本勢でも日立製作所は過去最大の7500億円を投じてスイスのABBの送配電事業を買収した。今後は太陽光や洋上風力発電など再生エネルギーの拡大をにらみ、発電事業より収益拡大が見込める送配電事業にシフトする。
三菱重工も日立から火力発電事業を取り込み、9月に「三菱パワー」と改名してスタートを切ったが、経済産業省は低効率の石炭火力発電所の廃止を打ち出すなど、主力に据える事業は厳しい状況に追い込まれている。