自分でコントロールできる時間を増やすには?
この方法は、何も自由業の人だけに当てはまるわけではありません。就業時間が決まっている会社員であっても同じです。現に、先ほど例に挙げたカフカは、専業作家ではなく、保険局員として勤務しながら残りの時間で執筆をしていました。
会社員の場合、確かに始業時間などは決まっていますが、1日の中でその時間に何をするかをつぶさに見てみると、自由に使い方を決めている時間が必ずあります。まずは起床時間を何時にするかは、たとえ同じ会社に勤めている人であってもそれぞれ異なるでしょう。ぎりぎりまで寝ていて、あわてて起きて朝食もそこそこに電車に飛び乗る人もいれば、早く起きて瞑想をしたり、エクササイズをしたり、読書をしたり、体にいい朝食を食べたりと自分にとって意味のあることを習慣にしている人もいます。
デスクワークでは、1人でパソコンで作業をしている時間は、どのタスクを行なうか、自分で管理しているはずです。また、短時間の休憩は、自由にとることも多いでしょう。外回りの営業マンであれば、内勤の人よりも自分でコントロールできる時間は増えます。
同様の仕事を長くこなしているうちに、最も仕事がはかどり、質が上がる最適な時間の使い方が見えてきます。メールチェックなどのルーティンの仕事は、どの時間帯に行なうのが最も効率的なのか。頭を使い、集中すべき仕事はいつ行なうと質が高くなるのか。電話対応や来客、会議など、自分ではコントロールできない仕事が入りやすい時間も考慮しながら決めていきます。
一定時間ごとに強制的に休憩をとるということも、長時間仕事をする際には有効です。外部の人とアポイントメントをとる時間も、自分で決められるのであれば、ほかの仕事が最もうまくいく時間を、迷わず設定することができるようになります。
そして、仕事が終わったあと、寝るまでの時間をどのようにすごすのかも自分で決めることができます。家族との団らんの時間をいかに確保するか、勉強や読書の時間をいかに確保するか、いつ息抜きをするかなどです。
1日のスケジュールを決める前に見極めておかなければならないのが、自分が「朝型」なのか、「夜型」なのか、という点です。先ほどの作家たちは、「朝型」が多かったのですが、「夜のほうが集中力が高まる」という人もいるでしょう。
夜早く寝て朝早く起きて仕事や勉強などをする期間と、夜に仕事や勉強などをする期間をそれぞれ設けてみて、自分にはどちらが向いているかを慎重に見極めるのです。そして、それがわかったら、「朝型」の人は朝を中心に、「夜型」の人は夜を中心にスケジュールを組んでいくことになります。
スケジュールは、机上で単純に時間を割り振ってもうまくいきません。どのようなスケジュールにすれば、精神、肉体ともベストな状態で日々を送れるのか、何度も試行錯誤を繰り返しながら、最適解を導き出す必要があります。
目の前の状況やそのときの感情に流されて、受動的な、怠惰な時間をすごすのではなく、明確な目的を持って、能動的に時間コントロールするという意識を持つことが大切です。そうすれば、時間を自分のものとして、長期的に成果をもたらす武器にできるはずです。
「時間を自分の味方につけるには、ある程度自分の意志で時間をコントロールできるようにならなくてはならない」――村上春樹『職業としての小説家』新潮文庫