衆議院議員 小池百合子
1976年、カイロ大学文学部卒業。アラビア語通訳、ニュースキャスターなどを経て、92年、衆議院議員に初当選した。2003年、環境大臣に就任。その後、内閣特命担当大臣、首相補佐官、防衛大臣などを歴任。

「言葉じゃなくて、彼の存在そのものが有権者へのメッセージなのでは。アメリカ人は、彼の言葉を細部まで聞きたいと思っていない。現時点では」

かつて、何人か黒人の副大統領候補が登場したことがあるが、小池氏は、彼らに、合衆国に対するそこはかとない怨念のようなものを感じとっていた。しかし、オバマは奴隷の末裔ではなく、ハワイで生まれ、インドネシアでの在住経験も持ち、まさに混沌に満ちた人生を送っている。

「04年のデビュー演説で彼が述べた『アメリカ合衆国』とは、彼自身のことだと、アメリカ人は感じているのではないでしょうか」

米国を象徴するような複雑な生い立ちを背負い、静かにしかし力強く訴えかけるオバマの姿。小池氏はその姿をどこかで見たと感じた。米国の宗教番組に登場する、カリスマ牧師の説法に近いのだ。

不安定な米国で、見事に演出されたオバマのプレゼンテーション力は、日本経済が不振だった時期に有権者の心をつかんだ小泉純一郎元首相と比較される。長きにわたって小泉元首相の秘書官を務めた飯島勲氏のオバマに対する見方は至ってシンプルだ。

「ヒラリー・クリントンとの違いは、まず、無名で若いということ。信用できるということ、黒人ということ。これだけじゃないかと思うんですよね」

期待と信頼、裏切らない、ぶれない、そしてはっきり主張する。これらのキーワードは、国境を超えた選挙戦略の基本であると飯島氏は断言する。

「マケインとオバマ、共和党と民主党、どちらが勝つかはわからない。けれど、オバマは今の合衆国の中で明らかに新鮮にうつる。そして、何か他の人と違う、何かやってくれるんじゃないかという、ヒラリーがアピールした実績なんて消し飛ぶくらいの新鮮さと期待感がそこには見えるんです」

実績や政策云々より、わかりやすいイメージの相乗効果が票に与える影響は大きい。飯島氏曰く、そこへ持っていくのがブレーンの仕事なのだ。